【ブラック企業入社編-2話】青年を襲う悲劇の連鎖
このブログは、とんでもない田舎に生を受けた人見知りの少年が、やがてコミュ力お化けになり年収3,000万超えを果たす迄の軌跡である。
----------
青年は早速騙されていた。
北海道から遠隔で決めた新居。
大学を卒業し、青年は東京に近いという事で契約した千葉県松戸市の新居へと向かっていた。
羽田空港に降り立ち、、、
降り立ち、、、
青年は1人で電車に乗ったことが無かった。
(電車がある環境では無かったし、今までは同行者がいた)
どうやって新居へ向かうのか分からない。
取り敢えず適当に切符を買い、電車に乗ってみた。
品川駅に着くと、大勢の人が下車。
「きっとここで降りるんだ!」
電車を降りた青年。
次にどうしたら良いのか分からない。
「確か乗り換えというのをするはずだ。」
浅い知識を頼った青年は、何となく改札を出た。
出たは良いものの、、、
次に何をすれば良いのか分からない。
「取り敢えず切符を買って、、、」
その後青年は、新幹線の改札に切符を入れて駅員に怪しまれ、半泣きの状態で「僕は馬橋に行きたいんです(泣)」と懇願するのだった。
駅員さんに教えてもらったはいいが、いつか空いている便が来ると思いながら満員の山手線を何度も何度も見送り(来ないのだが)。
勿論逆方面の電車にも乗ってしまい。
新居の最寄駅に着いたのは日付が変わる寸前だった。
(朝イチに北海道を出たのだが)
疲弊し切っていた青年は、不動産屋から送られていた雑なマップが印刷された紙を取り出す。
「確か駅から15分だったな」
しかし、歩けど歩けど何故か地図を辿っている気がしない。
2時間弱歩き回った青年はすっかり迷子になり、大きな荷物を背負ったまま道路に座り込んでいた。
すると1台のタクシーが青年の横に停まった。
「お兄ちゃん何してるの?」
至極真っ当な質問だった。
タクシーの運転手さんは目をまん丸にして聞いてきた。
「家に行きたいんです、、、」
「はぁ?家ってお兄ちゃん、、えぇ!?」
事情を話すと、何と駅から徒歩15分ではなく、車で15分の距離だと力説する運転手さん。
絶望する青年を哀れに思ったのか、運転手さんは無料で家まで送ってくれた。
青年は頭が外れるのではないかというくらい感謝をし、新居へ入った。
家具付き物件だったので、質素ではあるがテーブルも座椅子もある。
「取り敢えず今日は寝よう、、、うわぁぁぁぁぁぁ!!!???」
言葉とは面白いものである。
確かに”家具”はあった。
ちゃんとベッドもあった。
いや、”ベッドフレームだけ”あった。
再び絶望が青年を襲う。
3月とはいえ夜はまだ寒い。
電気はまだ通っていない。
(当日開通に間に合うはずだったがとっくに営業時間外だった)
青年は涙を流しながら薄いレースのカーテンを外し、体に巻き付け、硬いベッドの上で凍えながら朝日を待った。
「負けるもんか、、、負けるもんか、、、」
青年は何かを心に誓った。
朝を迎え、青年は隣駅のダイエーへと出向いた。
布団を買いに来たのだ。
3点セット9,980円、これだ。
レジで支払いを済ませ、配送を頼んだ。
「3日後のお届けになります〜」
またしても青年は絶望した。
「え?だって隣、、隣の駅ですよ!?」
青年が過ごした田舎では、ホームセンターなどで買い物をすると軽トラックが借りれた。
当然当日中に布団をゲット出来ると信じ込んでいたのだ。
昨晩の寒さを思い出した青年は叫んだ。
「じゃあ持って帰ります!!」
勿論車など無い。
青年は羽毛布団セットを背負い、駅へ向かった。
駅へ向かう道中、多くの通行人に笑われた。
駅のホームでも笑われた。
家の最寄駅に着いたが、ここから徒歩45分。
ヘトヘトで帰宅した青年だったが、布団を手に入れたことが嬉しくて仕方無かった。
(その後の青年は高級寝具を購入したり高級ホテルに宿泊をしたりするようになるのだが、あの日の布団の温もりが今でも人生で一番の温もりだった。)
一週間ほどですっかり家らしくなり、遂に青年は初出勤日を迎える。
(続く)