私たちは生きづらさを抱えている/姫野桂
二十歳前後、またはそれ以上の年齢で発達障害と診断されたりそれに該当すると気づいた当事者たちのインタビューを元に構成された本だった。
子育てにおける愛着障害や小児の発達障害の本を読んであったので現在の発達障害の診断や区分については難なく理解できた。
その既に持っている知識に実際の個人の体験が情報として追加されていく感じが読書体験として面白かった。
ASDの人と対話形式で進んでいくパートがあるのだけどまったく会話になっていない感じが文章にしてみるとよくわかる、でも実際は自分もこのようなコミュニケーションをしている時があるし、それはひとそれぞれのやり方もある。
周りが楽しそうにしていても何が楽しいのかわからない、自分が面白いことを話しても伝わらないというのは発達障害の人たちだけではないのではないかなと思う、それを障害のせいだけにはしたくないという人もいれば、周囲に理解を求める人もいる。その人の程度や特性によって周りに求めるものも全く違うのは当たり前のことなのに凄く見落としがちなんじゃないかな。
発達障害をカミングアウトする芸能人とかいるとそうでなければならないような気がして息苦しい、というのはどの障害のカテゴリでも同じなんだなと思った、私もそれでずいぶん息苦しかった時期があったから。
割と最近病気の区分が新しくなったりして、40歳をすぎてから診断がおりた人とかもいるけどまったく支援がない薬はもらえるけど治療がないと感じている人がいることも学びだった、どこか取り残されてしまった頼りない感覚には、少しだけ覚えがあって決して他人事ではない。
マイノリティは本当に存在しているのか、皆どこかのマイノリティなのではないか、マイノリティという言葉にはマイノリティだからという言い訳ができるような、そしてあなたはマイノリティだからというよくない共犯関係が含まれるのではないか。
勉強さえできれば評価される学校という制度は発達障害でもなんとかなる。
でも、社会で必要なのはコミュニケーション能力。
社会に出たら仕事ができるだけでは評価されない、人間関係が大事だから。
特性を知るだけで関係が改善されたり、自分の特性を知っていれば売りにできる。
まずは自分を知ること、それを相手に伝えられるようになることは生きづらさを軽減してくれるんだなと感じた。
あとやっぱりなかなか聞くことのできない当事者のいろいろな考え方にふれられれる貴重な本だったと思う。
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