最終回の公開前に、記しておきたいこと。
先週、ようやくひとつの区切りを迎えた。連載の最終原稿を書きあげ、布団に潜り込んだのは締切を1時間半も過ぎた頃だ。
なんて事をしてしまったんだろう、と思いながら、ガタガタ震えて横になる。眠かったはずなのに、妙に目がさえてしまって、気がつけば新聞配達のバイクの音が聞こえた。そして空がうっすらと明るくなる頃に、ようやく目を閉じて浅い眠りについたのだ。
ライターになってから、気づいたことがいくつかある。
まずは、自分の書いた文章が何十万という人の目に触れるという恐怖だ。
今まで私が書いた文章のPV数が、そこまで大きな数字に膨れ上がったことはない。社内広報だったり、新規サービスの紹介ブログだったり、たぶん1万を超えたことは無いのではないかと思う。
それが突然、40万近い読者を抱える媒体で毎週毎週恋愛小説を書くことになったのだ。最初は意気揚々と「書いてやるぜ!」と思っていたのだけれど、気がつけば毎週毎週血反吐が出るような思いで原稿を書く日々が続く。
読者の反応、数値の上下、数えきれない修正に、リライトの依頼。
「こんなつらいのかよ。」
というのが正直な私の感想だ。
とにかく本当に辛くて辛くてたまらなかった。何がつらいのか、今でも言葉にしようとすると、どう言えば良いのかわからない。けれどとにかくつらかった。
それは、思いつかなくても書き続けなければいけないつらさかもしれないし、あるいは自分の文章力の低さかもしれない。
人より少し作文が好き、程度の私だと気付かされたのが一番つらかった。書くことをなめていた自分にも腹がたったし、もう本当に最悪の気分になった。
だが、それでも担当編集の方が、私に叱咤激励の言葉をかけてくれる。ありがたいと同時に苦しくもあった。
連載延長のオファーを貰ったときも、指定書籍レビューのオファーを貰ったときも。
「わたしそんな器じゃないんですよ。ほんとに。」
その言葉を何度飲み込んだことだろう。
大きなチャンスを目の前にして、私はいつも足がすくむ。ガタガタと震え、人生が変わることを拒み、結局はいつもどおりの日常に逃げようとする。
私一人では、何も生み出すことは出来ないのだと知った。
けれど、なぜか書くこと、ライターでいることから、私は逃げ出せなかった。
その決断が果たして正しかったのか、今の私には知るよしも無いけれど、とにかく逃げることができなかったし、逃げたくないと思った。
ここに来るまで、負けっぱなしの人生だったのだ。少しくらい頑張ってみたい、と思ったのかもしれないし、あるいは、逃げることから逃げたのかもしれない。
正直どういう思いで書き続けているのかわからない。
渾身の最終回は今週の金曜日に公開される。
たまにアクセスランキングで一位を取ったり、コメント欄が爆発したり、かと思えば唐突に数値がガコンと落ちてしまったり。一喜一憂の連載がついに終わるのだ。
久しぶりに締切に追われない週末だ。
私はしばしこの開放感に浸ろう。
そして、こんな私を見放さず、「書け!書き続けろ!」と励ましてくれたすべての人にお礼を言いたい。
私は一人では何も生み出すことはできないけれど、私に関わるすべての人が今の私を作り上げてくれたのだから。
心から、ありがとうと言いたい。
さて、開放感ひゃっほー!みたいな事を書きながら気づいたのだが、私はいま新たな連載に向けての準備を進めている。
まさかの第2弾だ。
カレンダーを見てみれば、またしてもむこう数ヶ月は締切と戦う日々がやってくる。
恐ろしくも愛しい、ライターとしての人生を、私は生きてみようと思う。