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2020京都大学 国語 第二問(理系) 解答速報

出典は小松和彦『妖怪学新考 妖怪からみる日本人の心』。

問一「「闇」の喪失の危機」について、どのような意味で「危機」なのか、説明せよ。(三行)

〈GV解答例〉
谷崎にとって日本の美の理想であり、日本人の精神や日本文化全体、さらに人間全体にとっても重要性をもつ陰翳の状態や作用が、近代化により失われるという意味。(75)

〈参考 S台解答例〉
屋内で認識できる闇が身の回りから消えることは、明かりとその陰にできる闇とが調和した陰翳のある世界に見いだされる日本美の理想的状態の消失であるという意味で。(77)

〈参考 K塾解答例〉
光りと闇とが醸し出す陰翳がある世界は日本の美を生み出す文化的土壌であるばかりか、その陰翳の作用は、人間精神全体にとっても重要な役割を担うという意味で。(75)

〈参考 Yゼミ解答例〉
光と闇が織りなす陰翳の世界が失われることは、日本的な美の喪失というだけでなく、日本人の精神や文化、さらには人間にとって重要なものの喪失であるという意味。(76)

問二「それとともに多くの妖怪たちの姿も消え去ってしまったのである」のように言うのはなぜか、本文に即して説明せよ。(三行)

〈GV解答例〉
近代化に伴い陰翳のある闇の領域が失われていったことが、光と闇の合間に生起する幻影を現実の存在として感受し恐れをなす日本人の感性の喪失をもたらしたから。(75)

〈参考 S台解答例〉
電灯が普及した大正以降の物心両面の近代化により闇の領域が消滅していったことに伴い、日本人が、謎めいた闇を恐れ、妖怪という存在を想像することもなくなったから。(78)

〈参考 K塾解答例〉
人間の幻覚を誘う陰翳のある闇こそ妖怪たちが跳梁する世界であるが、近代化にともなう明るい電灯の普及と管理の浸透によって、そのような闇の領域が消失したから。(76)

〈参考 Yゼミ解答例〉
近代化にともない、電灯が普及して屋内が明るくなったことで闇の領域が日常世界から消滅し、合理的なものだけが脚光を浴びて、神秘的なものは失われたから。(73)

問三「大人たちの心情に訴えかける」ことができたのはなぜか、説明せよ。(三行)

〈GV解答例〉
『かなりや』が想起させる深い闇の恐怖空間は、近代化の進む大正期にも保たれており、単なる空想ではなくリアルな実在として大人の心に訴求する力をもったから。(75)

〈参考 S台解答例〉
明るさと暗さの漂う大正童謡は、直面する空間の背後に、未だに前近代的な謎めいた暗い空間が隠れていると感じ不安を覚えていた当時の大人の心にも通じていたから。(76)

〈参考 K塾解答例〉
大正時代には、前近代が抱えもっていた深い闇の恐怖空間が大人の心のなかにも息づいており、明暗が漂う当時の童謡はそうした感性を共振させるものであったから。(75)

〈参考 Yゼミ解答例〉
近代化にさらされた大人たちこそが、失われた奥深い闇への不安や懐かしさを敏感に感じるため、明るさと暗さが漂う大正期の背後に隠れた顔を見出してしまうから。(75)

#京都大学 #国語 #小松和彦 #妖怪学新考

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