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2021九大国語/第二問/解答速報

【21九大国語/第二問/解答速報】

出典は大浦康介『対面的 〈見つめ合い〉の人間学』

問1「「動物」とはよくいったものだ」(傍線部A)とあるが、それはどういうことか、説明せよ。(3行)

〈GV解答例〉
動物とは、字義的に、みずからひとりでに動くもののことだから、身体がつねに動いている生きている人間を「動物」と形容することは的を射た言い方だということ。(75)

〈参考 S台解答例〉
「動物」という言葉は、他者に動かされるのではなく、みずから、ひとりでに動くという動物の本質を端的に表現しているということ。(61)

〈参考 K塾解答例〉
動物とは他者に動かされるのではなく、ひとりでに動くもののことであり、生きている間つねに身体が動いている人間は、まさに「動物」と言えるということ。(72)

〈参考 Yゼミ解答例〉
生きている人間の身体は静止した状態に見えてもどこかが必ず動いているので、他者に動かされることなく自らひとりでに動くものを「動物」と名付けたのはいかにも適切だということ。(84)


問2「こうした繊細な動きというのは、顔かたちの似姿以上に、人間の「存在感」に直結している」(傍線部B)とあるが、それはどういうことか、具体的に説明せよ。(4行)

〈GV解答例〉
人間を個的に識別する部位にあたる顔かたちを似せること以上に、何もしていないときの人間のかすかな動きを再現することの方が、アンドロイドを本物の人間であるかのように感じさせる上で訴求効果が高いということ。(100)

〈参考 S台解答例〉
何もしていないときの人間のかすかな無意識の動きを再現したアンドロイドの微小動作は、人間の外見に似ている以上に、人間と対面したときに感じるような実在感に通じているということ。(86)

〈参考 K塾解答例〉
人間に似たロボットを作ろうとして人工筋肉を用いて実現させた、何もしていないときの人間に起こるかすかな動きは、外見的な類似性よりも、ロボットに人間らしさを与えるということ。(85)

〈参考 Yゼミ解答例〉
アンドロイドは人間に限りなく近いロボットを目指して作られるが、それが人間らしいかどうかを決めるのは、見かけが人間に似ているということよりも、何もしていないときの人間のかすかな動きをどれだけ再現できるかであるということ。(109)


問3「対面的磁場の根底にはこれがある」(傍線部C)とあるが、「これ」とは何か、説明せよ。(3行)

〈GV解答例〉
対面する人間に配慮することの根本要因であると筆者が推測するもので、生体の筋肉中の分子が不断に揺れ動くことから表出する、不可視のノイズとしての熱ゆらぎ。(75)

〈参考 S台解答例〉
生体の筋肉のなかが分子レベルでつねにゆらぎを起こし、無意識的な微小動作として身体の表面に現れるノイズとしての熱ゆらぎのこと。(62)

〈参考 K塾解答例〉
肉眼では見えないが、生体はこれを積極的に活用して僅かなエネルギー消費で生存している、分子レベルでの生体のゆらぎ運動のこと。(61)

〈参考 Yゼミ解答例〉
肉眼では見えないが、筋肉がつねに分子レベルで動いていることによって、生体自体もつねにゆらぐように運動していること。(57)


問4「成功したアンドロイドのまなざしに人はたじろぐ」(傍線部D)とあるが、それはなぜか、理由を説明せよ。(3行)

〈GV解答例〉
人間には対面する相手を人間だと感じた場合に限り相手の目から目を反らす習性があるので、アンドロイドでも人間らしさを感じるものならば、その習性が働くから。(75)

〈参考 S台解答例〉
人間に酷似したアンドロイドのまなざしは、人間のような社会的な関係を意識させ、目をそらさせてしまうほど人間に似ていることに人は驚くから。(67)

〈参考 K塾解答例〉
何もしていないときの人間に起こるかすかな動きを実現できたアンドロイドが、それを前にした人間に、自分とそれとの間に社会的な関係が生じたと感じさせるから。(75)

〈参考 Yゼミ解答例〉
人間に近いアンドロイドと対面した人間は、アンドロイドとの間にも社会的関係があるように感じるために、その目を見ていると、人間の目を見続けられないのと同じ感覚になるから。(83)


問5「ここでも、生きた人間であることの証が、対面性とかかわる部分で考えられている」(傍線部E)とあるが、それはどういうことか、説明せよ。(6行)

〈GV解答例〉
人間に酷似したアンドロイドに対し、その目を直視できないのと同様、容易に触れることができないのも、対面的磁場に由来する倫理性が働くからである。倫理性の成立に対面性は必須の条件ではないが、対面に際してはその基準が高まるので、対面で触れることへのためらいこそが、対象の人間らしさを裏づけるものだということ。(150)

〈参考 S台解答例〉
相手の目を直視し続けることができず目をそらすことと同じように、相手の身体に触れることをためらうという行為もまた、相手との間に社会的関係を感じとらせるという対面的磁場に由来する倫理性によるものであることは、人間が生きていることの証明になっているということ。(127)

〈参考 K塾解答例〉
人間のかすかな動きを実現できたアンドロイドが、それに対面した人間の目をそらさせるばかりか、人間が触れることまでもためらわせるところからわかるように、目の前の対象がモノではなく本物の人間かどうかを判定する根拠が、対面する人間とそれの間に社会的な関係や倫理性が生じたかどうかで考えられているということ。(149)

〈参考 Yゼミ解答例〉
人間に近いアンドロイドと対面した人間は、その目を直視し続けられないのと同様、容易に触れることもできない。このことが示しているのは、人間が目の前の存在を生きた人間と感じる条件に対面性が関係しているということだが、その対面性の根底には、身体の微細な動きの感知があり、それが、相手をモノのように扱ってはならないという倫理性を生んでいるということ。(170)


問6「ここに来て、「なぜ(何から何まで)似ていなければいけないのか」という問題意識へと大きく舵を切ったように見える」(傍線部F)とあるが、それはどういう「問題意識」なのか、具体的に説明せよ。(4行)

〈GV解答例〉
人間に限りなく近いロボットを作ろうとする中で対面性こそが人間らしさを担保するという認識に至った石黒よる、ロボットでその対面性を実現するためには最低限、人間のどの部位を残す必要があるのかという問題意識。(100)

〈参考 S台解答例〉
アンドロイドを人間らしくするには、容姿などすべてを真似る必要はなく、人間を感じさせる最小の要素である目や口を人間に似せ、対面性を実現すれば足りるのではないかという問題意識。(86)

〈参考 K塾解答例〉
対面的な状況においてロボットが人間らしく見えるには、〈人間〉を感じさせる最小の要素である目の動きがあればよいのではないかという、人間に似たロボットを作ろうとしてきた石黒の問題意識。(90)

〈参考 Yゼミ解答例〉
アンドロイドに人間らしさをもたせるには、外面的な類似性を限りなく追求する必要はなく、十分に人間らしい目と最低限の口といった、人間らしさを感じさせる最小の要素によって、対面する人間に社会的関係や倫理性があると思わせるだけでよいのではないかという問題意識。(102)

#九州大学 #国語 #解答速報 #大浦康介 #対面的見つめ合いの人間学

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