イッツァスモールワールドでガチ泣きした話

イッツァスモールワールド。言わずと知れたディズニーランドの有名アトラクションである。まず知らない人がいないというくらい有名ではあるが人気アトラクションかと言うと恐らくそうでもない。ディズニーランド開園と同時にウワァーー！！！！！イッツァスモールワールド一番乗りだぁあああぁーー！！！ウギャーーーーッッッッ！！！などと叫び声を上げて全力疾走する人間はそんなにいないだろう。

正直に告白しよう。私はイッツァスモールワールドをナメていた。人気アトラクションの合間に乗る休憩時間みたいなモンだとか、或いは閉園1時間前のガラガラになったパークで待ち時間30秒で乗れる最後の悪足掻き用のアトラクションであるだとか、とにかくイッツァスモールワールドというアトラクション自体に敬意を払ったことはなかった。だがそれは完全なる過ちだったと認めよう。

これは私がイッツァスモールワールドに心動かされ再び人の心を取り戻す物語…

◆小さな世界

泣いた。ガチ泣きした。しかも搭乗30秒で。完全に不覚だった。説明しよう。イッツァスモールワールドとは世界中の子供たちが踊ったり歌ったりととにかく平和的でほのぼのとしたアトラクションである。それ故にスリルを求めていたかつての私はそんな牧歌的な光景を鼻で笑っていたのだろう。馬鹿はお前だ馬鹿は。お前は何も分かってないガキだ。

イッツァスモールワールドで流れる歌の歌詞をここに記そう。

世界中どこだって笑いあり涙あり

ここで既にもうダメだった

私は既に幾つも見てきた。それこそ世界の人々の営みを、暮らしを。世界中多種多様な悲しみが満ちている。貧困、差別、紛争。よく『海外に比べて日本は〜』などと海外の良いところとだけ比べ日本を下げて喜ぶ海外かぶれの人間がいるが、実際にはその比較対象の国にも負の側面、人々を不幸にし、悲しませている問題が必ずあるのだ。ものすごく単純な事を言えばインドでは毎年2万人が狂犬により命を落とす。恐ろしい国ではないか。だが日本では毎年2万人の人間が自ら命を絶つ。これは国内で戦争をしているような死者の数ではないか？要するに種類の異なる困難、悲しみが各国の人間に襲いかかっている。しかしながら、そんな悲しみに打ちのめされることなく私に笑顔を向けてくれる人間も必ずいた。世界中どこだって笑いあり涙あり。私は悲しみに負けることなく笑顔で懸命に生きようとする命を、その可能性をいつまでも信じていたい。

次の歌詞を紹介しよう。

みんなそれぞれ助け合う ちいさなせかい

大号泣である。

何故だ。何故子供達は手を取り輪になれるのに、大人達よ。大人達よ何故こどもたちを巻き添えにして争うのだ。もうやめろ。そんなことは。

私の脳裏に浮かんだのはインドで出会った難民の少女である。彼女に関してはこの場所では書ききれない非常に凄惨な物語があり、それはいつか、きちんとちゃんとした場所を設けて語りたいのだが、何故だ。何故助け合わない？この小さな世界で争う必要があるか？誰かの尊厳や自由や幸福を犠牲にしてでも争わなくてはいけないこととはなんだ？子供が笑顔になれない世界なんて無い方が良い。そうだろう？イッツァスモールワールドで両手で顔面を覆いガチ号泣する本気でやべえ大人がそこにいた。ていうか僕だった。

◆せかいはただひとつ

イッツァスモールワールド、世界の縮図である。世界の縮図であると共にあるべき世界の姿である。この世界はイッツァスモールワールドの様になるべきだ。世界各国の子供達の営み、文化、その全てが眩しい。彼等は彼等の故郷で息づき、生を全うするそれはそれは尊い命なのだ。そして彼等は互いに歌い合う。平和を。友愛を。調和を。大人たちが成し得ないその偉業を。人間の醜さに眼を灼かれ憎しみの果てに自分を満足させてくれる人間、光景を追い求め世界中をまるで飢餓に責め立てられるかの様に旅をした私だったがついに見つけたのだ。約束の場所を。イッツァスモールワールドを。完敗だ。私の負けだよ。なあ教えてくれよ。ぼくも最初は君たち…みたいに…笑えた…の…かな…

◆最高だから乗れっつってんだよ

イッツァスモールワールドは最高である。救いであり光である。リニューアルによりディズニーキャラの子供達も参加したその光景は胸アツとしか言いようがない。だってハワイの場面でリロとスティッチが現れヘラクレスが神殿の柱をブチ壊しているのである。そしてそこにあるのは彼女達も私達と同じ世界に生きる命だということ。それが何処までも私の胸を滾らせ、熱くするのだ。

イッツァスモールワールド。ディズニーランドのアトラクションとしてはメインアトラクションを張る様な人気アトラクションではないかもしれない。だがしかしそこで、自分の見失っていたもの、或いはこの世界が見失っているものを再確認してはいかがだろうか。世界は何処も同じで、ただ一つなのだ。