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2020/02/20 舞台《カレイドスコープ 私を殺した人は無罪のまま》初日@新宿FACE

開幕初日、役者達の迫力に圧倒された2時間だった。演劇を全身に浴びた感じ。

会場は新宿FACE。会場中央に直方体の台。それを長机に見立てて椅子が配置される。テーブルを四方から囲むように客席。客席の中にも、椅子が配置されている。ここは、富田翔演ずる森田凌平の別荘。10人の登場人物達は、客席に混じり、客席の中を動く。会場すべてが舞台だ。縦横無尽に進行する会話劇。にやにやと話を掻き回していた新聞記者・浅井幸助(君沢ユウキ)が、突如感情をむき出して開き直る様子を目の前で見たときには、その剣幕に身体が震えるような、強張る感じがしたほどだ。

《カレイドスコープ 私を殺した人は無罪のまま》の梗概は以下の通り。

ある日、別荘で首を吊って亡くなっていた森田かすみが発見され、夏樹陸が容疑者として浮かんできた。しかし、他殺と見られたその事件は「自殺」と判断され、夏樹には無罪判決が下った。「判決・・・無罪」
娘を失い、気持ちの整理をつけることができない森田凌平は、時間が止まったような生活を送るようになった。

それから半年後の冬、凌平の身を案じた親友の伊藤健一により「凌平の為に真実を追求する」という名目で、判決に疑問を持った10人がかすみの亡くなった別荘に集められた。そして始まる、あの時のあの場所で一体何が起きたのかという話し合いが・・・。
事件と裁判の一部始終を追いかけている新聞記者の浅井幸助。
凌平の会社の元弁護士で今は検事の馬場貴明。
いつもかすみを見守っていた中学校の担任、影山雄太。
事件の被害者に寄り添う活動をしている五十嵐智久。
世間体を気にする凌平の姉で、かすみの叔母でもある鯨井祥子。
祥子の娘で、かすみを妹のように思っていた鯨井久美。

自殺か?それとも他殺なのか?
各々が主張する推論と矛盾に閉ざされた空間で、凍てついた感情だけが過ぎてゆく。一体どれだけの沈黙が続いたのだろうか・・・。
時計の針は無情にも正確に時間を刻んでいく・・・。謎に包まれた事件の真相を巡り、集まった10人のむき出しの感情と本心を鋭く暴いていくサスペンス密室劇。残酷なパラドックスの果てに導き出されるテーゼを知ったとき、
人は本当の優しさの意味を知る。

――《カレイドスコープ》HP「STORY」より

娘を亡くした森田凌平という役は本作で重要な人物だが、そういうところを超えた鬼気迫る富田翔氏の演技が圧倒的だった。息を呑むとはこういうことかと思った。

あらかじめ梗概を読んでいるから、本作のテーマが軽いものではないということは分かっていた。ただ、登場人物10人がそれぞれの立場で話をする、その見え隠れする思惑に観客は翻弄される。
「事実」と「真実」という言葉の使い方を含め、一人の少女の死とどのように向き合うのかが、観客にも突きつけられる。

演じることの凄みを随所に感じた本作。見終えたとき、俳優たちにとってその役(人物)を生きるとはどういうことなのだろうかと思わずにはいられなかった。舞台をそのまま映像化することが困難だからこそ、再演を熱望する。


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