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2020/02/19 集めたい/本の森で迷子

昔から蒐集癖がある。
シリーズで出ているものであれば、すべて揃っていると嬉しい。子供の時分から続いているのは、本とペンギン、CDだろうか。大人になってから、ここにわずかな美術作品が加わる。

特に、本は全集が好きで、幼い頃、自宅には『ディズニー名作絵話』全24巻(講談社)、祖父の家には『世界の童話』全50巻(小学館)があって、いつでも好きなものを選んで読めることが嬉しかった。文字も読めない頃から、どちらのシリーズともに何度も何度も読み聞かせをしてもらったことが、今のわたしを形作っている。(両者とも、本そのものは不幸な出来事のためにすでに失われてしまったけれど。)
しかも、小学3年生のときには、祖父の家に行くたびにコナン・ドイル『シャーロック=ホームズ全集』全14巻(偕成社)を買ってもらっていた。(これは今でも宝物で本棚のいいところに並んでいる。2006年のブログに記事あり。)

図鑑も大好きで飽きずに眺めていた。家にあったのは《小学館の学習百科図鑑》だ。『植物の図鑑』『昆虫の図鑑』『魚貝の図鑑』『鳥類の図鑑』『動物の図鑑』の5巻セット。特に『動物の図鑑』は繰り返し読み過ぎて、ノドのところから壊れてしまい、同じものを買いなおしてもらったほどだ。写真だけではなく、リアルなイラストもふんだんに盛り込まれているのが好きだった。函に入っているのが特別に思えるところも気に入っていた。子供の時から、物としての本も愛していたのだと思う。

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大人になってから買いそろえた全集といえば、ボルヘス編『新編 バベルの図書館』全6巻(国書刊行会)と池澤夏樹編『日本文学全集』全30巻(河出書房新社)だ。
前者については、新編には収録されなかった巻があり、その部分を友人が誕生日の贈物として届けてくれた思い出もあって、大好きなシリーズだ。
後者は、先日ようやく刊行された角田光代訳『源氏物語〈下〉』によって、完結をみた。足掛け6年。古典作品については。好きな作品が、好きな作家の手で新たな姿になるにがおもしろい、特徴ある全集だ。

安野モヨコ『監督不行届』(祥伝社)では、語り手「ロンパース」は、夫「カントクくん」が部屋に運び込む彼のコレクションについて「オタクとインテリアは常に相反する」と考え、「本とかDVDのタイトルが見えてるのはイヤなんだよね」と言う。それに対して、カントクくんは「わしは、わしのコレクションに囲まれていたいんじゃ~~~っ」と反論する。

コレクションに囲まれてうっとりする
それがオタクの幸せ

わたしが本書で一番共感したところだ。見よ、カントクくんの嬉々とした姿を!まるで自分を見ているかのようだ。

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故に、自宅は魔窟と化す。
幼い頃に本の森で迷子になったまま、そこに住みついてしまった。出会ったときに買わねば本は本屋から姿を消してしまうことや、おもしろい本は次のおもしろい本と出会わせてくれることを知ってしまったら、手許に置かずにはいられない。いつでも出会い直せる喜び!

今日は体感的にいつもよりゆったりした日で、邦ロックを愛すスーパー音楽フリークな同僚・S氏から、最近のお気に入りや発見の話を久々に聞いた。そのときに彼は「音楽は、CDで手に入るものはすべてCDで聴きます。それが僕なりの敬意の表明です」と話した。そういう付き合いかたをしていると、その人だけの体系が棚に出来上がってくる。それがまた一つの喜びになる。

もちろん本も音楽もいろんな付き合いかたがあるので、集めることが最上でも最善でもない。むしろ蒐集は業だ。でも、それによって自分の幸せが形作られているので、どうしようもない。とはいえ、たいした読書家でもないので、今生のうちに読める数はたかが知れている。だから、筒井康隆氏のように狩人を名乗ることはできないけれど、ささやかな本の森での暮らしを今日も続けるのだ。

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