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最近観た映画の話

n回目の「今年の映画面白すぎワロタ」ということで、ここ2,3ヶ月で鑑賞した映画作品の感想を順不同で書き連ねてゆきます。
いつも通り直接的なネタバレを避けていますので、気になった作品があればぜひチェックしてみてください。

アイの歌声を聴かせて

劇場アニメ作品「イヴの時間」「サカサマのパテマ」等の原作・監督・脚本である吉浦康裕氏の最新作。

あらすじは以下の通り。

景部高等学校に転入してきた謎の美少女、シオン(cv土屋太鳳)は抜群の運動神経と天真爛漫な性格で学校の人気者になるが…実は試験中の【AI】だった!
シオンはクラスでいつもひとりぼっちのサトミ(cv福原遥)の前で突然歌い出し、思いもよらない方法でサトミの“幸せ”を叶えようとする。 彼女がAIであることを知ってしまったサトミと、幼馴染で機械マニアのトウマ(cv工藤阿須加)、人気NO.1イケメンのゴッちゃん(cv興津和幸)、気の強いアヤ(cv小松未可子)、柔道部員のサンダー(cv日野聡)たちは、シオンに振り回されながらも、ひたむきな姿とその歌声に心動かされていく。 しかしシオンがサトミのためにとったある行動をきっかけに、大騒動に巻き込まれてしまう――。 ちょっぴりポンコツなAIとクラスメイトが織りなす、ハートフルエンターテイメント!
(※YouTube概要欄より引用)

漫画家の紀伊カンナ先生がキャラクター原案を務めたこともあり、作品が発表された時から密かに期待を寄せていましたが、こちらの予想を遥かに上回るスペクタクルを見せてくれました。

AIであるシオンを主軸に、ロボットであるが故の"空気の読めなさ"で問題を抱えた思春期の少年少女たちにぶつかっていき、やがてトラブルが解決し親交が深まっていくという王道な青春譚ではあるのですが、その手法にミュージカル要素を取り入れているのが本作の特徴。

物語を展開するにあたって「なぜミュージカルであるのか」、また登場人物の心情を表すためとはいえ唐突に歌い踊る「ミュージカルならではの非現実感にどう向き合っていくのか」を観客に明示してくれるため、ストーリーの強度・説得力がとても高い作品になっていると感じました。

特に後者の「非現実感の表現」について説明すると、本作の舞台はインフラや農業の管理機能をAIに委ねた地方の実験都市であり、同じくAIであるシオンはインターネットを通じて電子機器へアクセスすることでその機能をコントロールすることができるため、自らの意志で街灯を点けたり校内スピーカーから音楽を流したりすることが出来るのです。それらはもちろんミュージカルパートにおいて最大限に活用され、キャストの熱演やドラマチックな作画とともに観客へ大きな感動を与えてくれます。

音楽に合わせて明滅するライトや大小さまざまな舞台装置は、例えアニメ作品であっても通常ありえない状況ですが、本作では劇中でしっかりと理由付けがされているのでビジュアルや音楽に特化しただけで終わらないところが素晴らしいと思います。私はミュージカル映画はそこまで通ってこなかったのですが、説得力のある歌唱シーンだったので驚きと感動が入り混じった感覚で観ておりました。

もう一点の「なぜミュージカルであるのか」についてはストーリー上の重大なネタバレを含むためここでは伏せますが、ぜひレンタルや配信等でも体験していただきたいですね。
この表現が適切かどうか分かりませんが、語弊を恐れずに言えば、かつてのディズニー映画へのリスペクトを表現したような作品であるとも感じました。
ミュージカルとしてもジュブナイルとしても、とてもクオリティの高い映画だと思うのでお勧めです。

サントラもよろしくお願いします。


アナザーラウンド

「北欧の至宝」とも称されるマッツ・ミケルセン主演

あらすじは以下の通り。

冴えない高校教師4人は、ノルウェー人哲学者の「血中アルコール濃度を一定の度合い保つと仕事の効率が良くなり創造力がみなぎる」という理論を証明するため実験をすることに。朝から酒を飲み続け常に酔った状態を保つと、授業も楽しくなり、生き生きとする。だが、すべての行動には結果が伴うのだった―
(※YouTube概要欄より引用)

デンマークの名優マッツ・ミケルセンが、あらゆるシーン・あらゆる角度で酒を飲むカットを堪能できる作品。
うだつの上がらない4人の中年教師たちが常にお酒を飲むことで気分を上向きにさせ、仕事やプライベートにも自信をもって臨んでいくというスリリングなストーリーと、まるで子供時代に戻ったかのように悪戯っぽい笑顔を見せる主演俳優陣の演技は必見です。

PVにも一部映っていますが、生徒たちに囲まれたマッツがシャンパンをラッパ飲みする一連のシーンは、ギラギラと陽光が差す港町というロケーションもあって最高のカタルシスをもたらしてくれました。
特に白を基調にした生徒たちの服装とダークグレーのスーツに身を包んだマッツとの対比も美しく、俳優になる前はダンサーであった彼のスタイルの良さも堪能できる名場面ですね。

なお撮影中は実際に飲酒していたわけではなく、酔い段階に応じた緻密な演技分けは2週間にもおよぶアルコール・ブートキャンプによる訓練の賜物ということです。
(※上記記事には本編へのネタバレを含みます)

社会的立場から解放され悪ガキのようにはしゃぐおじ様たちのコメディさ、酩酊してゆくマッツのセクシーさ、やがて周囲との摩擦に思い悩むドラマチックさ。アルコールがもたらす悪い影響ではなく良い部分に焦点を当てて作られた本作、普段お酒を飲まれない方にもおススメです。

※ちなみにデンマークでは16歳から飲酒ができるうえ、仕事仲間とのランチでお酒が出ようものならそれを飲み干すまで帰らないとも言われているそうです。日本とはお酒への考え方がまったく違いますね。


テーラー 人生の仕立て屋

本国ギリシャ最大の映画祭や国外の映画祭でも数多くの賞にノミネートされた傑作。

あらすじは以下の通り。

アテネで36年間、高級スーツの仕立て屋店を父と営んできた寡黙なニコス。だが不況で店は銀行に差し押さえられ、父は倒れてしまう。崖っぷちのニコスは店を飛び出し、手作りの移動式屋台で仕立て屋を始める。だが道端で高級スーツは全く売れず、商売は傾く一方・・・。そんな時、思いがけないオファーがくる。「ウェディングドレスは作れる?」これまで紳士服一筋だったニコス。思い切ってオーダーメイドのドレス作りを始めるが―!?
一歩を踏み出した生真面目な仕立て屋。彼が作る色とりどりのドレスが、新たな出会いと幸せを繋いでいく、希望溢れる感動作!
(※公式サイトより引用)

正直に言って、今年観た映画の中でいちばん好きな作品です。
ストーリーや劇伴の使い方、役者の演技とロケーション等々、様々な要素がこれ以上ないほど一つに溶け合っていて、一本のフィクション作品としてこれほど自然で魅せられるものは無いように感じました。

中でもやはり最大の見どころは、舞台であるアテネの市街地やエーゲ海沿いの風景までも楽しむことができ、まるで旅行に行っているかのような感覚を覚えることでしょうか。

移動式の仕立て屋ということで買い手のところまで荷台を引く描写が頻繁に挿入されるのですが、本作の主人公は寡黙であり、基本的に1人で仕事先に向かうため会話劇で場を繋ぐこともできません。
ともすれば退屈になってしまう移動シーンも、あえて登場人物から注目を外させることで異国情緒に満たされた美しい街並みに目を奪われる作りになっているのが素晴らしいです。BGMも音数が少ないものがほとんどで、むしろ賑やかな市場の喧騒だったり青々と広がるエーゲ海の波の音などの環境音が目立つ印象がありました。

私はギリシャに訪れたことはありませんが、本当に目の前に風景が広がっているかのような、かつて体験したことがあるかのような、そんな不思議な感覚にさせてくれる映画でした。馴染みのない言葉や文化であったとしても、そこで生きる人々の素朴なやり取りは他人事のように感じられず、たっぷりの情緒と親近感でもって迎え入れてくれます。

2022年3月22日にデジタル配信&DVDリリースされるそうなので、ぜひ一度観ていただけると嬉しいです。


ラストナイト・イン・ソーホー

「ベイビー・ドライバー」「ショーン・オブ・ザ・デッド」等のエドガー・ライト監督最新作のサイコホラー。

あらすじは以下の通り。

ファッションデザイナーを夢見るエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)は、ロンドンのデザイン学校に入学する。しかし同級生たちとの寮生活に馴染めず、ソーホー地区の片隅で一人暮らしを始めることに。新居のアパートで眠りに着くと、夢の中で60年代のソーホーにいた。そこで歌手を夢見る魅惑的なサンディ(アニャ・テイラー=ジョイ)に出会うと、身体も感覚も彼女とシンクロしていく。夢の中の体験が現実にも影響を与え、充実した毎日を送れるようになったエロイーズは、タイムリープを繰り返していく。だがある日、夢の中でサンディが殺されるところを目撃してしまう。その日を境に現実で謎の亡霊が現れ始め、徐々に精神を蝕まれるエロイーズ。そんな中、サンディを殺した殺人鬼が現代にも生きている可能性に気づき、エロイーズはたった一人で事件の真相を追いかけるのだが……。
果たして、殺人鬼は一体誰なのか?そして亡霊の目的とは-!?

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主演2人が可愛すぎて…。

同監督の「ホットファズ -俺たちスーパーポリスメン!-」が好きだったので前情報を仕入れずに行ったのですが、かなりエグめのホラーだったので疲労感と満足感が大きかったです。

基本的には現代を生きる主人公であるエロイーズ視点で描かれるものの、60年代のソーホー地区と現代のソーホー地区の物語が同時に展開されるため、やがて精神に不調を来すエロイーズのように観客の心も揺さぶられていきます。

夢の中で同一化してしまう60年代パートの主人公(サンディ)とエロイーズが目まぐるしく入れ替わる、ノーカットのダンスシーンは圧巻です。

当初は煌びやかなネオンライトに包まれた60年代ソーホーの風景に目を惹かれますが、気が付けばその輝きが毒々しく感じられるようになる、シームレスな映像体験に打ちのめされました。
加えて60年代ソーホーにおいてサンディを演じるアニャの、蠱惑的なほどに大きな瞳と整った美貌も舞台映えが素晴らしかったですね。

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ただ、ホラーというジャンルであることを除いても、展開の都合上どうしても性差に関する表現が中心となってしまい、他人にオススメしづらいのが難点でしょうか…。(今年の映画では「最後の決闘裁判」も同じ要素を含みますが)

性差の表現をエンタメとして見られれば楽しめると思いますので、ぜひ鑑賞してみてください。


最後に

今年の映画も大作揃いでとても楽しめましたが、2022年は早々に「スパイダーマン ノーウェイホーム」というド級の話題作があるので、今後も映画館にお世話になりまくると思います。
新作映画がこれ以上延期したり劇場公開中止しない世界になることを祈りながら……。


その他

以下、今年その他に観た映画を軽く紹介。

キングスマン:ファースト・エージェント

最初の公開予定から2年も待たせやがって…最高でした…。

ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ

様々な事情がありましたが、今後のソニースパイダーマンユニバースも目が離せないです。

最後の決闘裁判

テーマは重いけど、同じエピソードを3回繰り返したうえでしっかり映画として面白い作りになっているの、さすがリドリースコット監督です。

エターナルズ

評価するのがとても難しい映画。

DUNE/砂の惑星

評価するのがとても難しい映画その2

クリスマス・ウォーズ

予告編が最高到達点。

007/ノー・タイム・トゥ・ダイ

良くも悪くも007っぽくないという感想。キャリア最後のジェームズボンドお疲れ様でした。

クーリエ:最高機密の運び屋

とあるシーンを演じるために体重を10キロも減量してからドクターストレンジ2の撮影に臨んだカンバーバッチに拍手。

プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第2章

早く続きが観たい映画

劇場版 Free!-the Final Stroke- 前編

早く続きが観たい映画その2

モンタナの目撃者

山火事×暗殺者がどう結びつくのか懸念してましたが思いのほか面白かったです。

オールド

シチュエーションスリラーって出オチになりがちと心配していたら老化に伴うありとあらゆる事が起きて最悪の気分になりました(誉め言葉)

シャン・チー/テン・リングスの伝説

MCUフェーズ4の本格的な始まりを感じるファンタジーカンフーアクション映画

プリズマ☆イリヤ Licht 名前の無い少女

早く続きが観たい映画その3

ワイルド・スピード/ジェットブレイク

いよいよ宇宙に行ってしまったので次の最終章は原点回帰で普通にレースしてほしいですね

ドント・ブリーズ2

個人的に1作目は超えられなかったけどアクション映画として観ればそれなりに面白かったかもしれません

ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結

早々にリブートされた甲斐あって、涙あり笑いありゴア表現ありでとても良かったです

Fate/Grand Order -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-

最終章の映像化の割にキャラクターが喋らなくて残念

ブラック・ウィドウ

既に作中で死亡したキャラの過去編はあまりにもツラいです

劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト

二郎系ラーメンをわんこそば感覚で出してくるような胃もたれするほどのアニメ体験。個人的に今年のアニメの中ではナンバーワンですね

モータルコンバット

常に目が発光している浅野忠信と、仮面を付けたり外したりする真田広之が観られる映画。原作ゲームは未プレイですが、アクションとゴア表現の見応えバッチリでした


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