最近観た映画の話
n回目の「今年の映画面白すぎワロタ」ということで、ここ2,3ヶ月で鑑賞した映画作品の感想を順不同で書き連ねてゆきます。
いつも通り直接的なネタバレを避けていますので、気になった作品があればぜひチェックしてみてください。
アイの歌声を聴かせて
あらすじは以下の通り。
漫画家の紀伊カンナ先生がキャラクター原案を務めたこともあり、作品が発表された時から密かに期待を寄せていましたが、こちらの予想を遥かに上回るスペクタクルを見せてくれました。
AIであるシオンを主軸に、ロボットであるが故の"空気の読めなさ"で問題を抱えた思春期の少年少女たちにぶつかっていき、やがてトラブルが解決し親交が深まっていくという王道な青春譚ではあるのですが、その手法にミュージカル要素を取り入れているのが本作の特徴。
物語を展開するにあたって「なぜミュージカルであるのか」、また登場人物の心情を表すためとはいえ唐突に歌い踊る「ミュージカルならではの非現実感にどう向き合っていくのか」を観客に明示してくれるため、ストーリーの強度・説得力がとても高い作品になっていると感じました。
特に後者の「非現実感の表現」について説明すると、本作の舞台はインフラや農業の管理機能をAIに委ねた地方の実験都市であり、同じくAIであるシオンはインターネットを通じて電子機器へアクセスすることでその機能をコントロールすることができるため、自らの意志で街灯を点けたり校内スピーカーから音楽を流したりすることが出来るのです。それらはもちろんミュージカルパートにおいて最大限に活用され、キャストの熱演やドラマチックな作画とともに観客へ大きな感動を与えてくれます。
音楽に合わせて明滅するライトや大小さまざまな舞台装置は、例えアニメ作品であっても通常ありえない状況ですが、本作では劇中でしっかりと理由付けがされているのでビジュアルや音楽に特化しただけで終わらないところが素晴らしいと思います。私はミュージカル映画はそこまで通ってこなかったのですが、説得力のある歌唱シーンだったので驚きと感動が入り混じった感覚で観ておりました。
もう一点の「なぜミュージカルであるのか」についてはストーリー上の重大なネタバレを含むためここでは伏せますが、ぜひレンタルや配信等でも体験していただきたいですね。
この表現が適切かどうか分かりませんが、語弊を恐れずに言えば、かつてのディズニー映画へのリスペクトを表現したような作品であるとも感じました。
ミュージカルとしてもジュブナイルとしても、とてもクオリティの高い映画だと思うのでお勧めです。
アナザーラウンド
あらすじは以下の通り。
デンマークの名優マッツ・ミケルセンが、あらゆるシーン・あらゆる角度で酒を飲むカットを堪能できる作品。
うだつの上がらない4人の中年教師たちが常にお酒を飲むことで気分を上向きにさせ、仕事やプライベートにも自信をもって臨んでいくというスリリングなストーリーと、まるで子供時代に戻ったかのように悪戯っぽい笑顔を見せる主演俳優陣の演技は必見です。
PVにも一部映っていますが、生徒たちに囲まれたマッツがシャンパンをラッパ飲みする一連のシーンは、ギラギラと陽光が差す港町というロケーションもあって最高のカタルシスをもたらしてくれました。
特に白を基調にした生徒たちの服装とダークグレーのスーツに身を包んだマッツとの対比も美しく、俳優になる前はダンサーであった彼のスタイルの良さも堪能できる名場面ですね。
社会的立場から解放され悪ガキのようにはしゃぐおじ様たちのコメディさ、酩酊してゆくマッツのセクシーさ、やがて周囲との摩擦に思い悩むドラマチックさ。アルコールがもたらす悪い影響ではなく良い部分に焦点を当てて作られた本作、普段お酒を飲まれない方にもおススメです。
テーラー 人生の仕立て屋
あらすじは以下の通り。
正直に言って、今年観た映画の中でいちばん好きな作品です。
ストーリーや劇伴の使い方、役者の演技とロケーション等々、様々な要素がこれ以上ないほど一つに溶け合っていて、一本のフィクション作品としてこれほど自然で魅せられるものは無いように感じました。
中でもやはり最大の見どころは、舞台であるアテネの市街地やエーゲ海沿いの風景までも楽しむことができ、まるで旅行に行っているかのような感覚を覚えることでしょうか。
移動式の仕立て屋ということで買い手のところまで荷台を引く描写が頻繁に挿入されるのですが、本作の主人公は寡黙であり、基本的に1人で仕事先に向かうため会話劇で場を繋ぐこともできません。
ともすれば退屈になってしまう移動シーンも、あえて登場人物から注目を外させることで異国情緒に満たされた美しい街並みに目を奪われる作りになっているのが素晴らしいです。BGMも音数が少ないものがほとんどで、むしろ賑やかな市場の喧騒だったり青々と広がるエーゲ海の波の音などの環境音が目立つ印象がありました。
私はギリシャに訪れたことはありませんが、本当に目の前に風景が広がっているかのような、かつて体験したことがあるかのような、そんな不思議な感覚にさせてくれる映画でした。馴染みのない言葉や文化であったとしても、そこで生きる人々の素朴なやり取りは他人事のように感じられず、たっぷりの情緒と親近感でもって迎え入れてくれます。
2022年3月22日にデジタル配信&DVDリリースされるそうなので、ぜひ一度観ていただけると嬉しいです。
ラストナイト・イン・ソーホー
あらすじは以下の通り。
同監督の「ホットファズ -俺たちスーパーポリスメン!-」が好きだったので前情報を仕入れずに行ったのですが、かなりエグめのホラーだったので疲労感と満足感が大きかったです。
基本的には現代を生きる主人公であるエロイーズ視点で描かれるものの、60年代のソーホー地区と現代のソーホー地区の物語が同時に展開されるため、やがて精神に不調を来すエロイーズのように観客の心も揺さぶられていきます。
当初は煌びやかなネオンライトに包まれた60年代ソーホーの風景に目を惹かれますが、気が付けばその輝きが毒々しく感じられるようになる、シームレスな映像体験に打ちのめされました。
加えて60年代ソーホーにおいてサンディを演じるアニャの、蠱惑的なほどに大きな瞳と整った美貌も舞台映えが素晴らしかったですね。
性差の表現をエンタメとして見られれば楽しめると思いますので、ぜひ鑑賞してみてください。
最後に
今年の映画も大作揃いでとても楽しめましたが、2022年は早々に「スパイダーマン ノーウェイホーム」というド級の話題作があるので、今後も映画館にお世話になりまくると思います。
新作映画がこれ以上延期したり劇場公開中止しない世界になることを祈りながら……。
その他
以下、今年その他に観た映画を軽く紹介。
キングスマン:ファースト・エージェント
ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ
最後の決闘裁判
エターナルズ
DUNE/砂の惑星
クリスマス・ウォーズ
007/ノー・タイム・トゥ・ダイ
クーリエ:最高機密の運び屋
プリンセス・プリンシパル Crown Handler 第2章
劇場版 Free!-the Final Stroke- 前編
モンタナの目撃者
オールド
シャン・チー/テン・リングスの伝説
プリズマ☆イリヤ Licht 名前の無い少女
ワイルド・スピード/ジェットブレイク
ドント・ブリーズ2
ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結
Fate/Grand Order -終局特異点 冠位時間神殿ソロモン-
ブラック・ウィドウ
劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト
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