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「フリー・ガイ」ほか最近の映画の感想

今年の映画面白すぎワロタということで、ここ2,3か月で鑑賞した劇場公開作品について、個人的に面白かったものの感想を簡単に書いていきます。
できるだけ決定的なストーリーのネタバレは避けておりますので、興味を惹かれたものがあればぜひチェックしてみてください。
なお、それぞれのお名前については敬称略にて失礼します。

フリー・ガイ

マジで今夏ナンバーワンなので今すぐ劇場へ行ってほしいくらいおススメ。

デッドプール名探偵ピカチュウで知られるライアン・レイノルズが、またまた最高のエンターテインメントを私たちに魅せてくれました。

ディズニーが20世紀スタジオを買収したおかげで実現した最高の悪ふざけ番宣。

あらすじは以下の通り。

平凡で退屈な毎日を繰り返す、銀行窓口係の男=ガイ。
ある日、自分がゲームの世界の“モブ(背景)キャラ”だという、
<衝撃の真実>に気付いてしまう…。
そして、新しい自分に生まれ変わるため、彼は自分勝手に立ち上がる!
はたしてガイ(モブ男)は、愛する彼女と街の平和を守り、
主人公=ヒーローに成り上がれるのか!?
(※YouTube概要欄より引用)

オンラインゲーム内の出来事をメインに扱った作品なので、近いところでは「レディ・プレイヤー1」が思い当たりますが、あちらよりも現代的な舞台かつギャグに振り切ったような印象です。

この手の作品の何が最高かといえば、やはり「現実世界でゲーム(映画の舞台となっている作品)をプレイしている人物がいる」という設定だからこそできる、観客とのコミュニケーションですね。
例えばレディ・プレイヤー1ではゲーム内アイテムとして「メカゴジラ」「ガンダム」がそのままの名前で登場したり、傑作ホラー映画「シャイニング」のステージが登場したりというような、実際に映画を観ている私たちも知っている作品・ネタが劇中でも使用されるため、まるで現実の延長戦上に起こっている出来事のように錯覚させてくれます。

フリー・ガイも同様のメタフィクションの手法を取り入れていますが、メジャーなタイトルが多いと思うので深い知識が無くとも楽しめるのではないでしょうか。

他作品やゲームの知識が必要なネタを除いても純粋にコメディ映画として丁寧にまとまってますし、悪役であるタイカ・ワイティティのコミカルな演技は必見です。

本作で起こる事件の多くは基本的にはゲーム内のものであり、観客へかかるストレスはその強力なフィルターによってかなり弱まるので、万人にオススメできると思います。
今のうちに、ぜひ劇場へ足をお運びください。


ゴジラvsコング

※なお、私はゴジラ派です。

個人的に2021年で最も楽しみにしていた超大作。
日本のゴジラとアメリカのキングコングという説明不要の2大モンスターが殴り合う、説明不要にアドレナリンがどばっどば溢れる最強のアクション映画でした。

前作の「キングオブモンスターズ」は画的にも内容的にも神話・宗教的なディレクションをされていたと思いますが、今回は徹頭徹尾プロレスだったのが笑えてくるんですよね。

キングギドラが氷壁に埋まっているカットや翼を広げ空へ放電するカットは圧倒的で惚れ惚れします。

こういったコラボレーションは①いがみ合い→②共通の敵が現れて共闘、というのがありがちな展開ですが、本作は予告にもある「ONE WILL FALL」の通り明確に勝者が決まります
国境さえ越えたコラボでありながら、しっかりと直接対決の末に優劣をつけたのは本当に素晴らしいですね。負けた方もただ泥が付くだけでなく、華を持たせるような落としどころが用意されているので読後感もスッキリです。

そもそもゴジラとコングがなぜ戦うのか? コングは髑髏島にいるはずでは?という当然の疑問もありますが、そんなことは些細な問題なのでオープニングの数分で片付けられます。そしてタイトルロゴがデカデカと映し出されて、観客は「なるほどこれはとにかくゴジラとコングが戦う映画なんだな」と理解するわけですね。

人間ドラマや出演俳優を目当てに観に行くと楽しめないかもしれませんが、超巨大な生物が殺意MAXにぶつかり合う最高峰のモンスター映画なのは間違いないので、できるだけデカい画面と音で体験してもらえればと思います。
とにかく説明不要です。


ジェントルメン

ウィル・スミスがジーニーを演じたことで話題になった実写版「アラジン」ガイ・リッチー監督最新作。その他「シャーロック・ホームズ」等。

もう何回見たか覚えてないほど最高にクールな予告。BGMと映像の音ハメが気持ち良すぎて今でも見返すくらい大好きです。

語彙力無くなるほどお洒落でカッコいいオープニング。

「ダラス・バイヤーズクラブ」「インターステラー」マシュー・マコノヒー主演で、監督としては20年ぶりになるロンドンを舞台にしたクライムサスペンス。
ロンドンの麻薬王が引退のためビジネスの譲り先を探していたところ、噂を嗅ぎつけたチャイニーズ・ロシアンマフィアにダウンタウンのチーマー等々、ワルい連中が続々と継承争いに参戦する群像劇です。

本作最大の特徴は、出てくる紳士たちがとにかく全員カッコイイ。
これに尽きます。

ロンドンの街並みを背景にスーツを着こなし、煙草をくゆらす激渋の俳優陣がいるだけでとんでもなく画になるんですよね。
人生観や哲学が滲み出るようなイケオジが大集合するのでもうたまりません…。主要キャラの中では紅一点となる麻薬王の妻さえも引けを取らないレベルでカッコいいのでマジで完璧です。

※個人的にいちばん面白かったのは、麻薬カルテルでありながら、地元の悪ガキたちにスマホで悪事を撮影されてしまい慌てふためく大人たち。
どれほど強い暴力を振りかざしていても、指先ひとつでインターネットに拡散されてしまう情報のチカラには勝てないというところが非常に現代らしくて感動しました。

物語の中心となるのはマシュー・マコノヒー演じる麻薬王ミッキーですが、本作はミッキーの右腕であるレイと、私立探偵のフレッチャーが一連の事件の語り手となって、物語を振り返る形式で進行していきます。
つまり、2人が語っている事件は作中では既に起きている出来事であり、事件の再現VTRのような形でミッキーは登場するということですね。

2人によって語られるストーリーが面白いのはもちろんですが、堅物のレイとお調子者のフレッチャーの凸凹コンビ?による、緊張感を孕んだコメディチックな掛け合いも愛嬌があってお見事。

監督のデビュー作「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」や2作目の「スナッチ」でも同様ですが、ある登場人物の行動が直接関わりのない別集団のストーリーに影響を及ぼし、最後にはそれぞれの物語に決着がつくというのは群像劇ならではの感動体験だと思います。
時系列や人物相関図を整理するのに少し手間取るかもしれませんが、この構成・脚本の妙技こそが本作のキモだと思うので、ぜひご鑑賞ください。

「オッドタクシー」のようなテイストの作品といえば伝わる方もいるでしょうか…。

なおガイリッチー監督の最新作も10月8日に日本公開が決まっていますので、合わせてチェックしてみてくださいね。

監督にとっては「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」「スナッチ」以来となる、ジェイソン・ステイサムとタッグを組んだ作品。


サイダーのように言葉が湧き上がる

「十七回目の 夏に 君と会う」
フライングドッグ10周年記念作品。「四月は君の嘘」イシグロキョウヘイ監督初となるオリジナル作品で、劇伴を「聲の形」牛尾憲輔、キャラクターデザインは「アイカツスターズ!」愛敬由紀子

同時期の「竜とそばかすの姫」がスペクタクル的な感動だとすれば、こちらはじんわりと沁み入るような感動がある作品です。

地方都市のショッピングモールを舞台に、コミュニケーションが苦手な俳句好きの少年チェリーと、矯正中の前歯にコンプレックスを持つ人気配信者の少女スマイルのひと月にも満たないボーイミーツガール。

モールにまつわる登場人物の多さの割に90分という上映時間ということで、絶妙に物足りなさを感じる作りになっているのが素晴らしいですね。
キャラクターそれぞれに背景があり、興味を惹かれるエピソードを示唆しておきながら、その多くが語られることはありません。

さらにストーリー展開という点で言えば、主役である2人ではなく想い出のレコードを探す老人フジヤマに起因して物語は進んでいきます。

チェリーがアルバイトをしているデイサービスの女性スタッフや老人たち・個性的なスマイルの姉妹・モールを遊び場にしているラテンアメリカ系の少年に、彼に手を焼くスタッフ等々、群像劇としての特性を持ちながら、フジヤマ老人が探しているレコード(音楽)という要素でパッケージングされているため、スッキリと統一感のある作品になっている構成力に脱帽です。

少し物足りなく感じるキャラクター描写についても、あえて削ることで「夏」が持つ陰の部分(寂寥感や物悲しさ・儚さ)を表しているんだろうなという感想さえ湧いてきますね。

また本作を象徴する要素のひとつでもある俳句についてですが、作中に登場するものは全て実際に現役の高校生が詠んだ作品というから驚きです。
こういった制作の裏話はパンフレットに色々と詳しく書かれているので、手に入るようであればぜひ購入してみてください。

劇中歌でもある「YAMAZAKURA」のピクチャーレコードを模した最高のデザインで、裏表紙を含めた隅々まで息を吞むような仕上がりです。

オタクは特殊装丁に弱い…。
劇中歌「YAMAZAKURA/大貫妙子」


ライトハウス

「ムーンライト」「ミッドサマー」等の製作スタジオA24「ウィッチ」ロバート・エガース監督がタッグを組んだ最悪(褒め言葉)のスリラー。
主演はウィレム・デフォーロバート・パティンソン

言語化不可能です。助けてください。

白黒の35mmフィルムで撮影された本作は、かつての無声映画のような正方形に近いアスペクト比でスクリーンに投影されます。

19世紀の孤島を舞台に、2人の灯台守の4週間に及ぶ共同生活。
偏屈なベテランのトーマス・ウェイクと寡黙な新人イーフレイム・ウィンズローは初日から衝突を繰り返しながら、やがて来る嵐の影響で完全に外界から孤立してしまいーー。

とても現代の映画とは思えない、モノクロの映像かつ正方形のアス比で迫りくる狂気。2時間たっぷりかけて人が狂っていく様を見せつけられてどうしろと…。

馴染みのないスクリーンにはほとんど主演2人しか登場しない上にその仲は険悪で、頻繁に鳴り響く鈍重な霧笛が鼓膜と内臓を揺らし、いま起きている出来事や語られる内容が真実なのかも分からないという始末。
何というか、初めて映画を観て気持ち悪くなったかもしれません。

とはいえ主演2人の演技力と、映像から伝わってくる"ナマモノ"感は凄まじく、息もつかせぬ罵倒の応酬は目を見張るものがありました。

作風に反して陽気に響く船乗りの民謡も恐怖になりますね…。
口ずさみたくなるようなリズムなのに、映画を観た後は頭にこびりついて離れない…。

専門的に勉強していない私でも分かるくらい随所に散りばめられた神話・絵画からのオマージュもあり、演劇の授業の題材になるような作品かもしれません。

まぁ、だからといって灯台掃除を口淫だとか、夕食のロブスターを男性器の暗喩だと言われても困りますが…。

たった2人しか出てこないからこそ、互いに男性的・女性的な役目を押し付けたり、父であろうとしたり、恋人であろうとしたり…目まぐるしく精神的ポジションが変化していく不安定さに思わず寒気がします。
理解が困難な作品ではありますが、なかなか他では見られない魅力がいくつもある映画でした。

インタビューや解説の文章量で殴り掛かってくるボリューミーなパンフレットも特徴的。

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単純に不気味。


以下、その他の作品をより簡潔に紹介。

Mr.ノーバディ

「ジョン・ウィック」「イコライザー」等と同じジャンルの「そこいらの中年オヤジが実はめちゃくちゃ強かった」系の作品。

脚本家は「ジョン・ウィック」シリーズの方ということで期待していましたが、やっぱり最高のアクション映画でした。上記のような作品とは違い、泥臭くスマートではない戦い方が新鮮です。
何より御年80歳を超えているクリストファー・ロイドがウッキウキでショットガンをぶっ放す映画は本作だけ!!

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「バックトゥザフューチャー3」から30年という事実。

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最高のポスター。


竜とそばかすの姫

「時をかける少女」「サマーウォーズ」等の細田守監督最新作。
主人公のBelle(CV.中村佳穂)をボーカルに迎えたmillennium paradeによるド級の名曲。

サマーウォーズを超えたかどうかは個人の感想としても、劇場で観るべき素晴らしい作品であることは間違いないです。
インターネットへの価値観や、仮想世界という舞台設定、それらを表現するビジュアル面が相当にアップデートされており、ある種集大成的な映画になっていると感じました。圧巻の作画と歌唱力で描かれるライブパートはお見事。

やっぱりスタジオ地図の作品が好き…。


終わりに

しばらく大作映画ラッシュが続くので、また来月にでもnoteは更新しようと思います。
今回は載せませんでしたが「ワイルドスピード」とか「少女☆歌劇レヴュースタァライト」とかもアウトプットしたいですしね。

それではまたの機会に。

とりあえずは「アナザーラウンド」「シャン・チー」が楽しみです。

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