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3月に観た映画・ドラマの話

3月は積みゲー消化月間になってしまい映画の本数は少なくなかったものの、ガツンと来るような大作もしっかり鑑賞できたので満足度の高いひと月でした。

大変遅ればせながらハイラルを救い号泣したりしてました。
いまはアメリカ大陸を横断しています。


次項より本題です。よろしくお願いします。


THE BATMAN

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ロバート・パティンソン主演&マット・リーヴス監督最新作にして、何度もリブートされてきたバットマン映画の待望の最新作。

あらすじは以下の通り。

優しくもミステリアスな青年ブルースは、両親殺害の復讐を誓い、夜は黒いマスクで素顔を隠し犯罪者を見つけては力でねじ伏せ、悪と敵対する存在の“バットマン”になろうとしている。ある日、権力者が標的になった連続殺人事件が発生。その犯人を名乗るのは、史上最狂の知能犯リドラー。ヤツは犯行の際、必ず“なぞなぞ”を残し、警察や世界一優秀な探偵のブルースを挑発する。いったい何のために犯行を繰り返すのか?そして暴かれる、政府の陰謀とブルースにまつわる過去の悪事や父親の罪…。追い詰められたその時、彼の心の中で、何かが音を立てて壊れ始めた―。
あなたは世界の嘘を暴き、人間の本性を見抜けるか――。
(※YouTube概要欄より引用)

個人的にはベン・アフレックの演じるマッチョで自信家なバットマンが大好きだったので、今回描かれた活動2年目の若きバットマンの姿は何もかも新鮮でした。
単純に筋肉量が違うためスーツを着ていても線が細いですし、声色も高いように感じます。

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ついぞ単独映画が作られることのなかったベン・アフレック版のバットマン。いちおうゲストキャラクターとして別作品への出演は予定されていますが、そちらが最後になるそうです。あまりにも残念。

ただ、若き日のバットマンの苦悩を描いた本作においては、その線の細さやロバート・パティンソンの憂いを帯びた病的な色気が、観客に対してプラスに働いていたことは確かでしょう。

約3時間という長尺の上映時間に、画面に映るのは夜の暗闇ばかりで朝や昼間のシーンはほとんどありません。そんな中、暗闇から現れるバットマンはスマートとは言い難い不器用なアクションで戦い続け、たまにマスクを取ったと思えば強迫観念に駆られた素顔を見せる。その様はまさに見る者へ畏怖を覚えさせるものだったと思います。

これまでいくつもの実写映画が作られ、その度に違った切り口で表現されたキャラクターではありますが、基本的には「ゴッサムシティの資産家であるブルース・ウェイン/暗闇に紛れてヴィランと対峙するバットマン」の二重生活を描いていたように思います。
しかし本作のブルースはその境界が非常にあいまいで、それどころかマスクをしていなくても彼の心(行動原理)はバットマン1つでしかないと感じさせるほど。
まさしく「ザ・バットマン」というシンプルなタイトルが相応しい解釈だったのではないでしょうか。

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とても主人公には見えない印象的なカット。塗りたくられたアイシャドウのおかげで、マスクを被っている時に目を伏せると暗闇に溶け込むのもお見事。

また脇を固めるキャラクターたちも非常に魅力的です。
メインヴィランであるリドラーはその境遇や目的から本作のもう一人の主人公とも言えますし、親族を失ったブルースの父親たらんとする老執事アルフレッドの抱える悲しみや、協力者であるキャットウーマンの芯の強さが伺える造形は、どれもが現実味を帯びた人間としての厚みを感じさせてくれました。
続編が正式に決定された際は更なる活躍に期待したいですね。映画ではありませんが、本作ではあまり見せ場がなかったペンギンのスピンオフが控えていることもあり、彼のヴィランとしての成長も楽しみなところです。

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特殊メイクで変身したコリン・ファレル演じるペンギン。撮影の合間にこのメイクでスタバに行って周囲に何度も見られたエピソードも。

本作のテーマに沿うように作中ほどんどの場面が暗いうえ、知能犯が相手ということで爽快なアクションも少なく、遂にはバットマン自身の信念さえ揺さぶられる。いわゆるスーパーヒーロー映画としては異色な雰囲気を纏っているものの、個人的にはクリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」3部作や多くの賞を受賞した「JOKER」にも全く引けを取らない傑作でした。

なお、事情により本編から削除された未公開シーンもYouTubeで公開されていますので、ぜひ本編鑑賞後に確認してみてください。



フォレスト・ガンプ/一期一会

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「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ロバート・ゼメキス監督と「プライベート・ライアン」トム・ハンクス主演作品。不朽の名作といわれるタイトルがおよそ30年ぶりに色鮮やかにリバイバル。

あらすじは以下の通り。

アラバマ州グリンボウの田舎で女手ひとつで育てられたフォレスト・ガンプ。
小学校に入ったものの、勉強が苦手で足にギブスをはめたフォレストはバカにされてばかり。
遊んでくれるのはスクールバスで一緒になった優しい女の子、ジェニーだけだった。
ある日、同級生たちにいじめられていたフォレストは、「走って!」というジェニーの声で猛然と駆け出す。
それも足のギブスが吹き飛ぶほどのスピードで—。
アメフト全米代表、ベトナム戦争、卓球世界選手権、エビ漁船船長、
そのままフォレストは風のような速さで自らの人生を駆け抜けてゆく—。
(※公式サイトより引用)

タイトルやキービジュアルは知っていましたが、実は今回のリバイバルが初鑑賞でした。そのためどのようなストーリーなのか、監督や主演は誰なのかも知らず、「リバイバルしてるなら観ておきたいな」というくらいの気持ちで劇場へ足を運びましたが、人生のベストだという方がいるのも納得の感動的なヒューマンドラマでした。

映画が始まると、停留所でバスを待ちながらチョコレートを食べる主人公のフォレストが映し出されます。一見するとビジネスマンのようなスーツ姿ではありますが、相反するように履いているスニーカーは傷だらけで泥まみれ。フォレストは同じくバスを待つ見知らぬ女性に挨拶をして、自身の生い立ちを語り聞かせるという手法で物語は進行していきます。

話は小学生時代まで遡り、フォレストは心と身体に障害を持っていることが明かされます。生まれながらにハンデを負ったこと、父親が居ないことから好奇の目に晒されてしまいますが、母親の愛情とスクールバスで出会う少女ジェニーへの好意を支えにし、やがて不自由な足を克服していきます。
そこから描かれる怒涛の年月は、出会いと別れを繰り返したフォレストの人生をセンチメンタルに追体験するだけでなく、アメリカという国の歴史・大衆文化の変遷をなぞるという楽しみ方もあり、繰り返し鑑賞しても色褪せない面白さがあると感じました。

実際に体験した世代ではないにしろ、世界史を勉強していれば聞いたことある事件や著名人が登場するので、何となくニヤリとさせられますね。(もちろんフィクションですが)

フォレストに着想を得たことにされたエルヴィス・プレスリーの名曲。

また、ある意味では障害を抱えているからこそ実直に生きる道を走ることができたフォレストとは対照的に、想いを寄せるジェニーやベトナム戦争で出会うダン小隊長らは、激動の時代に振り回されてしまったキャラクターでした。
恐らくですが、基本的には大人しいというか、どこか掴みどころのないフォレストに代わって喜怒哀楽を表現する役割も担っていたと思います。

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ゲイリー・シニーズ演じるダン小隊長。登場時から責任感の強さに惹かれるキャラクターでしたが、フォレストに負けず劣らず起伏の激しい人生を送ったのではないでしょうか。いちばん好きなキャラクターです。

語り部として聞き手を導いたフォレストが登場人物とともにこれからの時間を過ごしていく終盤は、自然と涙があふれ出てきてしまいます。
それぞれが苦難に直面し、もがきながら、遠回りをしながら、自分らしくあるべき場所を模索する。心があたたかくなる傑作でした。

劇場で観ることができて本当に良かったです。



クイーンズ・ギャンビット


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アニャ・テイラー=ジョイ主演のNetflixオリジナルドラマシリーズ。タイトルの意味はチェスの戦法の1つ。

あらすじは以下の通り。

1950年代の児童養護施設で、人並外れたチェスの才能を開花させた少女は、依存症に苦しみながら、想像もしていなかった華やかなスターへの道を歩いていく。
(※Netflix作品ページより引用)

60分前後の全7エピソードで構成された本作。幼少期にチェスと出会った主人公ベス(エリザベス)がチェスの世界に飛び込み、やがて男性中心の業界を驚かすプロプレイヤーに成長していく物語です。

本作の見どころはたくさんあると思いますが、個人的には、チェスや人間ドラマというより、ファッションの移り変わりが観ていてとても楽しい要素だと感じました。

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本人の成長につれ、レトロから徐々にモダンに近づいていく数々の衣装を着こなすアニャ。多彩なヘアスタイルにも要注目。

私は服飾の歴史に明るくはありませんが、何となく古いなと思わせる街並み・ファッションと、その情報に沿って描かれるステレオタイプなキャラクターたちは、シンプルだからこそ分かりやすく、そして印象的です。服飾以外にも彼ら象徴するアイコンは肌の色や性別だったり、国境によるものだったりと様々ですが、良い意味でこちらの第一印象を裏切らない活躍を見せてくれます。
年代が進むにつれてメインとなる登場人物が交代するという物語構造も、サブキャラクター同士の繋がりが薄くなり分かりやすさに繋がるポイントですね。

また分かりやすさという要素に伴って押さえておきたいもう1つのポイントは、スポ根的な王道のストーリーです。
チェス駒の動かし方は知っていても、定石とされる戦法や用語までは分からないという方が多いかと思いますが、ドラマを見る上では全く気にする必要はありません。というのも、対局シーンにおいて重点的に描かれるのは盤面の戦況ではなくプレイヤー同士の無言の演技合戦だからです。

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射抜くような目力で対局に臨むベス。勝負師としての才覚をこれでもかと表現しています。

対局中のプレイヤーは喋ることができないというルールがあるそうで、それに則っての演出なのか、いわゆるモノローグも無かったと記憶しています。(あったとしてもごく僅かか、もしくは映像はそのままに対局後の感想をモノローグとして挿し込む演出だったかと)

互いの持ち時間を示すチェス・クロックの秒針が刻まれる音と駒を動かす音などの環境音がリズミカルに奏でられ、どちらが優勢か瞬時に判別できず、役者の目線の動きやちょっとした所作に焦点が当たるカメラワークも相まって観ている者の緊張感はバツグンです。
これほどまでに視覚・聴覚の情報を重視した画づくりにはどんな人をも惹き込むパワーがあり、チェスの歴史やルールといった知識を前提としていないため普遍的な面白さがある作品でした。

「男性中心の競技に挑む孤高の女性プレイヤー」という構図に興味を持ったのであれば、ぜひ視聴してみてください。



その他

以下、その他に鑑賞した映画を軽く紹介します。

ガンパウダー・ミルクシェイク

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カレン・ギラン主演。タフな女たちが裏社会を牛耳る男たちとバイオレンスに戦いまくる作品ですが、個人的には物足りない印象。アクションシーンの発想も面白いだけに、早回しが多かったのも残念に感じました。世界観の描写がもっとあればハマったかもしれません。
ただ個性的なセリフ回しやキャストのビジュアルに奇抜なアクション演出等、どっぷりハマる人も多い作品だと思います。


ドント・ルック・アップ

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政治・インターネットへの風刺を盛りに盛ったブラックコメディ。キャスト欄を見れば分かる通り名優揃いですが、個人的には観ていてツラい気持ちになってしまいました。オチやテーマは好きなのですが、そこに至るまでのキャラクターの描き方が合わなかったなという感想。
まぁ社会風刺とはそういうものかもしれません。


博士と狂人

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製作に70年かかったと言われるオックスフォード英語大辞典を題材にしたノンフィクション小説を映像化。
まるで別作品の登場人物ように描かれる2人の視線が、たった一つの出来事をきっかけに交差していく様に感動しました。メル・ギブソンショーン・ペンの重厚な演技力にも脱帽。特にショーン・ペン演じるウィリアムの精神病が進行していく様は鬼気迫るものがありました。


タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら

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幼馴染の中年コンビ、タッカーデイルは念願のコテージを買い取って休暇を満喫しようとするも、たまたま近くでキャンプをしてた大学生グループが絡んできては何故か次々に死んでいくというスプラッタ・コメディ。バカバカしさの中にも「美女と野獣」的なエッセンスを感じる作品。グロ耐性があればおススメです。


デッド・ドント・ダイ

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ビル・マーレイアダム・ドライバーティルダ・スウィントンと錚々たる顔ぶれが集結したゾンビ映画。冒頭から不穏な空気感が漂いますが、これといって目を惹くような展開になることもなく終わってしまいました。非常に残念な作品。


最後に

今年のアカデミー賞の主演男優賞は「tick,tick...BOOM!」でノミネートされていたアンドリュー・ガーフィールドに取ってほしかったなぁというファン心理が働きましたが、ノミネートされている方々や作品を見ると豊作揃いだったので仕方ないかなとも思います。

4月5月も注目作が多そうですしサブスク配信も観たいものが積まれていく一方なので、地道に崩していこうと思います。

それではまた。

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