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「師資相承」の真髄

先月読んだ『月刊致知』7月号は、
師資相承ししそうしょうが特集テーマでした。

難しい言葉ですが、要は
師匠から弟子へと、「道」を
次代に伝えていく
こと。

その特集の中に、イタリアンの名店と
して全国に名をとどろかせている
山形の「アル・ケッチャーノ」
オーナーシェフ・奥田政行さん
その実質的な師匠である葆里湛ホリタン
シェフの後藤光雄さんとの対談記事があり、
興味深い内容でしたのでここで
紹介させてください。

この記事の中で、奥田シェフの修行
時代の話がたくさん実例として紹介
されていました。

奥田さんに限らないのですが、
今50代以上で活躍されている方々の
多くが、すさまじい修業時代を経て
力をつけている
ことが多い、
そんな印象を持っています。
今だとパワハラモラハラとして
認定されそうな話ばかり。

奥田さんの例でいうと、
とにかく怒鳴られる。
「おまえの『すみません』は聞き飽きた!」
「同じことを言うな」

といった具合で、
一日に二十回は怒鳴られたそうです。

しかし、奥田さんが凄いのは、
後藤シェフの料理の凄さを認めた上で、
とにかくこの人に付いていけば間違い
ない!と確信
したので、自分を何度も
怒鳴るシェフを嫌いにならないために
写真を胸ポケットに忍ばせていた

それくらい本気で後藤シェフから
一切合切を学びに行くんだ、という
真剣さで日々の仕事に臨んだ
ところ。

それだけの真剣度合いですから、
引き上げられたのも当然と言えば
当然だったのでしょう。

但し、ただただ真剣だったから
良かった訳ではありません。
そこは、奥田さんの目の付け所
冴えていて、しっかりと相手の喜ぶ
ポイントを見抜くべく、俯瞰して
物事を見る力を持っていたことが
功を奏した
と思われます。

高校時代主将を務めたバドミントンで
シャトルを打ち返すイメージ
で、
シェフから要求される事柄を先に
イメージしておきつつ、来たものを
順に夢中でバンバン打ち返したら、
「きょう、よかったじゃないか」
と褒められ、そこで「一所懸命」が
勝つためのコツ
だと会得したと取れる
エピソードがありました。

余計なことを考えない。
自分がやるべき「ひとつのところ」を
守るために、とにかく「夢中」
なって先を読めばよい。

これは、スポーツでも仕事でも、
共通して通用する「真理」
では
ないでしょうか。

奥田さんは、その後も一貫して
後藤さんの期待値を想像し、
マメにコミュニケーションをとりつつ、
先回りをして100点ではなく120点を
取ることを目指していた
ようです。

だからこそ、目をかけられ、
早くに引き上げてもらい、
その後のサクセスストーリーへと
つながっていった
のですね。

奥田さんと「アル・ケッチャーノ」の
サクセスストーリー
は、かなり有名な
話だと思うので、ここではわざわざ
書くことは控えます。

師匠を自分の「お客様」として捉え、
いかにして喜んでもらえるかに心を
配り、最善を尽くす
ことで、弟子たる
シェフが成功するのならば、
これは弟子が「マーケティング」的な
考え方を発揮することこそ成功要因
だということになります。

「師資相承」を円滑に実現するには、
この弟子の「マーケティング」発想と
行動がカギを握っている。

この記事を読んで、そんなことを
改めて感じたのでした。


己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。