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ティッシュペーパーの市場

先般のトイレットペーパーの話に
引き続き、今度はティッシュ
ペーパーのことをつらつらと
書いてみる。

そもそも、なぜ「ティッシュ」
というか、ご存じだろうか?
英語表記だと、tissueとなる。
この表記を踏まえて、
「ティシュ」とか「ティシュー」と
いう日本語表記を採用している
企業・ブランドもあるのだが、
一般的にはなぜか「ティッシュ」が
普及してしまった。

tissueという単語を見ると、
私はつい「(細胞の)組織」という
訳を思い出す。
いわゆるティッシュペーパーの
tissueに相当するのは、
「薄い織物」という訳の方。
パルプを原料にして、
薄い紙を抄(す)く。
ミクロで見るとパルプの繊維が
縦横に折り重なっているのが分かる。
まさに、「薄いパルプの織物」
といった趣き。

トイレットペーパーも、
ティッシュペーパーも、
いずれも原料はパルプである。
パルプというのは、木材をチップに
して、それをドロドロにとかして
植物繊維として分離したものだ。
パルプから、「ジャンボロール」と
呼ばれる原紙を作り、それを
最終製品化するという流れは、
トイレットペーパーと同じである。

大きな違いは、トイレットペーパーは
古紙原料から成るものが4割ほど
シェアを占めているのに比べ、
ティッシュの場合は古紙原料品が
ほとんど市場に出回っていないこと。
これは、使用用途の違いが原因。

お尻を拭くのであれば、
リサイクル品でも抵抗がない人が
多いが、鼻をかむ、顔の汚れを拭う、
そういった用途にあたり、得体の
しれない「古紙」が原料の紙は
使いたくない!という根強い感情が
消費者の側にある。
それゆえ、メーカーの側もあえて
古紙原料で作ったティッシュを
売り出すことはしていないのだ。
(なお、リサイクル品が全く存在
しないわけではなく、僅かながら
見かけることもある。)

トイレットペーパーは、
エリエールを擁する大王製紙が
圧倒的なNo.1シェアを獲得している
が、ティッシュになると意外と
苦戦を強いられている。
No.1は、日本製紙クレシアで、
アメリカではティッシュの代名詞とも
言われる「クリネックス」の日本に
おける専売権を持っている。
「スコッティ」と併せて、2割5分
ほどのシェアにも上るのだ。

エリエールが苦戦、とは書いたが、
日本製紙クレシアと大王製紙の差は
実はごく僅か。
特に花粉症に悩む人が増加する
この季節は、エリエールの
「贅沢保湿」「+ウォーター」
いうローション系ティッシュが
圧倒的に強い。
他社も後追いで色々出しているが、
エリエールの強さには全くもって
かなわないのだ。
大王製紙のシェアもまた、2割5分に
届こうかというレベルだったので、
今となっては日本製紙クレシアを
抜いてしまったかもしれない。

そして、トイレットペーパーで
3番手に甘んじている王子製紙が、
ティッシュでもやはり3番手。
「鼻セレブ」というローション
ティッシュの先駆けとなった
ブランドを擁すも、総合力で
エリエールの後塵を拝する結果と
なっている。

ティッシュペーパーは、
付加価値を付けにくい、よって
価格競争に巻き込まれやすい
商材の最たるもの。
それでも、ローション剤を紙に
吹き付けるというイノベーションで
生まれた「贅沢保湿」「鼻セレブ」
などのローションティッシュが、
消費者の心をつかみ、市場を大きく
伸ばしてきた。
たかがティッシュ、毎日大量に使う
ものだからなるべく安く買いたい、
というのが大半の消費者の気持ち。
そんな市場であっても、ユーザーの
声なき声を汲み取って、不快を快へ
変える製品を開発すれば、市場は
伸ばせる。
オーソドックスなマーケティング
の成功例として、とても分かり
やすい事例だ。

今回のコロナ騒動で、ティッシュも
品薄となる状況があちこちの店頭で
起きている様子。
トイレットペーパーと同様、国内
供給体制は万全のはずなので、
変な噂にうろたえる必要はない
ことをお伝えしておく。

己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。