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伝説のホップ SORACHI 1984

日経MJで、サッポロとキリンが
ビールで協業しているなんていう
珍しい話を目にした。
記事自体は1ヶ月も前の話だが、
それを読んでずっとこのビールを
飲んでみたいなぁと頭の片隅に
引っ掛かっていたのだ。
今日、近所のスーパーで買い物を
していたときに、よし、今日こそ
買おう!と思い立ち、ようやく
試すことができたのだった。

ビールの主原料は、麦とホップで
ある。
ホップがあの苦みを出している。
最近はクラフトビールブーム。
様々な特徴のある、エッジの効いた
ビールがそこそこファンを獲得する
ケースもどんどん出て来ており、
ユニークなホップを使うことで、
他のビールとの差別化を図ろう、
そんな思惑を持つメーカーは
少なくない。

クラフトビールメーカーと言えば、
例えば「よなよなエール」などは
好調に推移してきたモデルの最たる
ものだろう。
今回のコロナ禍で相当ネガティブ
インパクトを受けただろうが、
既にかなり増えているファンが
支えてくれているのではないかと
推測できる。
coedoというブランドも、
頑張っているように見える。

サントリーやキリンが、彼らの
ような「弱小」ビールメーカーに
対抗心むき出しでクラフトビールを
出している現状を見ると、
間違いなく消費者の嗜好は個別化、
細分化していて、大手メーカーも
マス相手だけではなく、
「スモールマス」と呼ばれる
特定の嗜好を持つ人たちの、必ず
しも大きいとは言えないかたまり
にまで手を出していく時代へと
変わってきたことの実感が湧いて
くる。

さて、この「SORACHI 1984」という
ビールに話を戻そう。
こんな長い名前を付けたのは、この
ビールのウリがこのホップにある
からに他ならない。
北海道の空知に起源を持つこの
ホップは、日本ではなくアメリカで
その人気が爆発、逆輸入的な経緯で
日本でも大々的に発売されることに
なったようだ。
もう1年半前になるが、発売時の
ニュースリリースがサイトにある。

このリリースに、

今や世界が注目するようになった「ソラチエース」の開発から商品発売までの35年間のストーリーを訴求する商品戦略を展開していきます。

とある通り、「ソラチエース」という
ホップは今や世界から注目されており、
そこに至るまで35年もの時間を要した
というのだ。
そして、それだけの時間を要したと
いう事実を、逆に強みとして認識し、
なぜそこまで時間がかかったのか、
どのように強みが浸透していったの
かを「ストーリー」仕立てにして
訴求するという商品戦略を取ることを
リリースで宣言している。

この「ソラチエース」を軸に据えた
サッポロとキリンの協業は、
2019年に始まったもの。

キリンがアメリカの著名クラフトビール
メーカー「ブルックリン・ブルワリー」
と共同出資して作った日本法人が、
「ブルックリン・ソラチエース」という
商品を2019年2月に発売開始した。
今回サッポロが手掛けているビールと、
「ウリ」のポイントが全く一緒。
「ソラチエース」という独特の特徴を
携えた北海道発のホップがもたらす、
「強い苦みとレモン系の個性的な香り」
なのである。

両社は、より一層クラフトビールを
日本に根付かせ、ビールの美味しさ、
楽しさを消費者に知ってもらいたい、
そのような共通の目的をお互いに
見出した。

4社で90%はくだらないであろう、
典型的な寡占市場となっているビール。
発泡酒や第3のビールに押され、
またクラフトビールのような新しい
勢力にプレミアムな市場を侵食され、
過去の成功パターンを繰り返すだけでは
早晩ジリ貧となるのが確実。
そんな危機感が生んだコラボレーション
は、ある意味必然だったのかもしれない。

肝心の味の方だが、確かに苦みが強く、
レモンとその他のハーブを混ぜたような
香りがする。
クラフトビールを色々飲んでみる機会が
増え、エールビールはかなり好物なの
だが、個人的にはプレモルのエール
タイプの方が好み。

ただ、この手のクラフトビールは、
作り手の「物語」「ストーリー」と
共に「消費」することで、味わいも
より一層深まるというもの。
「ソラチエース」の紆余曲折の歴史、
凱旋に至った素敵な物語を読んだ今、
次回に飲んだときに自分の味覚が違う
答えを出す可能性を否定できない。

関東地方の梅雨も明け、ビールが
益々おいしい季節。
是非機会があったら、「ソラチエース」
も試してみてはいかがだろうか?


己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。