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「反脆弱性」というコンセプト

白鳥は黒いわけがない、白いから白鳥だ。
「黒い白鳥」というのは、
基本的にありえないわけだが、
そのありえないことが実はありうるのだ、
というときに使われる言葉が
「ブラックスワン」

この言葉がそのままタイトルになった
『ブラックスワン』というベストセラーを
憶えている方もいらっしゃるだろう。

15年も前の本で、中身はすっかり頭から
飛んでしまったが、これを書いた
ナシーム・ニコラス・タレブが5年前に
書いた本のタイトルが『反脆弱性』だ。

お盆休みに入った8月11日(山の日)から
毎朝、山口周さんの『武器になる哲学』
題材にした読書勉強会が開かれており、
11日、12日と参加している。

12日に、タレブの「反脆弱性」について
取り上げた章を読み進めたのだが、
なかなか興味深い内容なので、
自身の理解を深めるために少しばかり
ここで取り上げて咀嚼したい。

「脆弱性」とは、外部のショックや
ストレスに対して破壊されやすい性質

指している。
これに対して、「反脆弱性」は、
単に脆弱でないことを超えた概念で、
外乱や圧力によって、かえって
パフォーマンスが高まる性質
を指す。

山口さんは、「一見脆弱に見えるけれども
実は反脆弱なシステム」
と、「一見頑健に
見えるけれども実は脆弱なシステム」
との
対比が社会の至る所にあると指摘する。

そして、その例として
・「手に職を持った工務店の大工さん」と
「大手ゼネコンの総合職」
・「アメ横商店街」と「大型百貨店」
・「ママチャリ」と「ベンツSクラス」
を挙げている。

特に分かりにくい最後の例について
補足すると、ママチャリとベンツを
比べたらならば、どう考えてもベンツの
方が頑健に見える
わけだが、
それはあくまでも正常時に限った話
東日本大震災のような災害時だと、
交通システムが麻痺してしまい、
ママチャリの方が機動的に、かつ速く
都内を移動することが出来たことを
引き合いに、ママチャリの方が「反脆弱」
だと論じている。

この「反脆弱性」というコンセプトは、
経済、ビジネスの世界でも適用できる。
山口さんの著書では、組織論やキャリア論
適用して示唆を得ようとしている。

前者の経済、ビジネスの世界に関しては、
競争の激しい環境、いわば
「レッドオーシャン」というのは、
企業の息の根をあっさり止める可能性を
持っていると言える。

そんな環境の下で企業が生き残るには、
あえて先んじて外部のショックを導入し、
自らを改善し、進化させる契機とする

そんな考え方が必要になるのではないか。

後者の組織論、キャリア論については、
昔は花形だった金融系、大手都市銀行等の
仕事が、実は機械に代替させやすく、
またそこで得られる「スキル・知識」や
「人脈・信用」といった資本は企業内に蓄積
してしまうため、いざ会社から離れてしまう
キャリアの価値が大きく目減りしてしまう、
即ち「脆弱」だ
と説明されている。

それゆえ、一つの組織に依存しすぎず、
複数の組織やコミュニティに出入りして、
スキル・知識や人脈・信用をある程度幅広く
獲得していくことが「反脆弱」
となる。

特に後者の話については、
人生100年時代の折り返し地点にある
私と同年代の皆さんにとって、
より一層示唆深い内容と言えそうだ。


己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。