心洗われるとき

最近、読書対象が少し偏り気味かも、
そう思っていた。
いわゆるビジネス書の類を読むことが
多く、文芸ものにあまり触れる機会が
なかったからである。

家族は、東野圭吾とか、林真理子とか、
割とメジャーな娯楽作品を読んでいる
ことが多く、私もかつては推理小説を
頻繁に読みふけったものだ。
何に時間を奪われているのか、改めて
振り返ると、やはりスマホ経由での
SNSであったり、ZOOMでセミナーを
受けてみたり、YouTubeで無料公開
されているセミナー類をチェックして
みたり、以前に比べて格段に増えた、
様々な選択肢があれこれ思い返される。

そんな中で、久々に心洗われる作品を
読了した。
『氷点』で知られる三浦綾子さんの
初代秘書を務めた、宮嶋裕子さん。
旧姓・夏井坂さんという彼女が、
かつて『百万人の福音』という月刊誌
に連載したものに、七篇を加筆した
『三浦家の居間で』という一冊だ。

実は、国民的作家と言ってもいい
三浦綾子さんの膨大な著書を、
私自身はほとんど読んだことがない。
『氷点』を若い頃に読んだ気がする
のだが、中身を全く覚えていない
ところからすると、途中で挫折して
しまったか、読んだ気になっていた
だけかもしれない。

ただ、熱心なキリスト者であったと
いうことは知っていた。
そして、どの作品も、キリスト教の
色彩が色濃く出ているということも
伝え聞いて認識はしていた。

宗教に関しては、私自身、あくまで
ニュートラルである。
正月は神社に参拝する。
お彼岸とお盆にはお墓参り。
結婚式は教会で神父様に依頼。
という具合なので、何か一つの宗教に
帰依されている方々からは、なんて
いい加減な人、と思われても仕方ない
と思っている。
しかし、実際のところ、日本人には
非常に多いパターンではなかろうか。

長い時間を経て今に残る宗教は、
どれも基本的には素晴らしい教えを
持ち、それを広めるべく活動されて
いることに深い敬意を感じている。
私自身が、人生の指針としている
言葉たちも、その多くが宗教でも
熱心に説かれているような内容で
あることが多い。

その中に、例えば、接する人たち一人
ひとりに「ストローク」を与えられる
人でありたい、というのがある。
人生一期一会ゆえ、相対している人に
対して誠実に向き合い、関心を示し、
何がしかポジティブな影響を残せた
なら幸い
、そんな考え方を持っている。

三浦綾子さんという人は、向き合った
一人ひとりに対するその思いのかけ方
が素晴らしく深い、まるでマリア様の
ような慈愛あふれる方だった
のだと
いうことが、宮嶋さんの書かれた数々
のエピソードから胸に迫ってくる。

綾子さんに影響を受けて、あるいは
綾子さんの書いた作品を読むうちに、
キリスト者になりたいと思い、実際
洗礼を受けたという方々が、少なく
ないようだ。
洗礼まではいかずとも、作品にゆかり
ある地(ほとんどが北海道)まで、
わざわざはるばる足を運ばれる
熱心なファンも多い。

「一途」
宮嶋さんが書いてくださった、
綾子さんの人生の一断面を拝読し、
ただひたすらに、神様の意志のまま、
一途に生き切ったのだなぁ、
そんな感慨を持ち、その潔さ、
真摯さに心洗われたのだった。

遅ればせながら、せめて代表作
だけでも読んでみようと思う。



己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。