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「主語が誰か」を利用者は敏感に見抜く

アメリカにしばらくの間出張していたという
知人から聞いた話。
飛行機で空港に到着し、入国する際に、
「ファストトラック」なる制度を使って
検疫手続きを行ったそうだ。

コロナワクチンを接種しているかどうか
などの入国前手続きが義務付けられており、
全てを着陸後にバタバタとやるよりは、
事前に一部の手続きを済ませておくことで
スムーズな入国が可能になる
、という
触れ込みである。

ディズニーランドの「ファストパス」
連想させる名前ゆえ、この事前手続きを
しておけば、入国手続きがスイスイ行く
ものと期待
するだろう。

ところがどっこい、全然「ファスト」では
なかったというのである。
詳しい事情まではよく分からなかったが、
この「ファストトラック」を使っていない
同行者と、ほとんど手続きに要した時間が
変わらなかったようなのだ。

「よりスムーズな入国」というエサを
チラつかされたからこそ、事前にアプリを
インストールしたり、陰性証明の登録を
行なったりと、面倒な作業をしたものの、
結局期待したエサにはありつけなかった
ということになる。

彼が出した結論は、
「ファストトラックのファストというのは、
旅客の手続きがファストになるのではなく、
厚労省の旅客追跡がファストになるの意」
に違いない、というもの。
つまり、ファストトラックの主語が、
旅客ではなく規制当局ではないか

というのである。

いわゆる「DX」が進んでいない、
「お役所仕事」に堕している、
そんな痛烈な批判で、
残念な気持ちで一杯になった。

規制当局側からすれば、万一陽性者が
見つかった場合に、いかに速やかに
他から隔離するかが重要。
そのため、スマホにアプリを入れさせ、
個人情報を目一杯登録させて、
居所がすぐ分かるようにする。
そのために、旅客が多少面倒な手続きを
強いられたとしても仕方ない

そんな発想が透けて見える。

これを、旅客ファーストに組み替えていく
という発想が重要である。
あくまでも旅客が「お客様」である。
規制当局の都合の良いように最適化する
のではなく、旅客の都合を最大限に優先
してこそ、意味のある「DX」を成し得る

はずだ。

「これは、面倒を客に押し付けたな」
というような商品やサービスというのは、
ひとたび消費者が使ってみれば敏感に
気が付いてしまうもの
だ。
大半の消費者は、わざわざ大きく声を上げて
くれることもない。
そうやって、いつの間にか市場から消えて
しまう商品も少なくないだろう。

デジタル系のサービスの場合、完全に
商品が出来上がっていなくても、
「ベータ版」即ち今後の改良を織り込む形で
一旦市場に出してしまう、
ということが頻繁に行われる。
これは、「今後の改良を織り込む」からこそ
成り立つ
と言えるわけだ。

「お客様の面倒」を、いかに速やかになくして
いけるか。
コツコツ継続的に、面倒を取り除く作業を
続けていくことで、ようやく信用・信頼を
積み上げることができる。

「ファストトラック」で、そうした持続的な
改良が行われることを期待したい。


己に磨きをかけるための投資に回させていただき、よりよい記事を創作し続けるべく精進致します。