見出し画像

詩「黙視」

音もなく
しかし果てしなく
延焼する罪が心を焼き尽くす

灰で埋められ、詰まる血管を黙視する

苦し気に律動してみせる器官に
指を這わせ、耳をそばだて
爆ぜそうな脈を味わい
そっと唇で撫でて

純粋を装った桜色の爪を突き立て紅潮する頬

無様な裂け目から
際限なく噴き出るのが花弁ならば
わかりやすく奇術めいているが
かような変身は
幻想のなかでのみ実現することを
知ってしまっている

自らを欺く秘術への傾倒
禁じられたダブルイメージ

減少する細胞が躍動する
押し流され、確実に破られる壁
その奥に眠る果実は
いかにもかぐわしくよこしまなほどに美しい

目蓋は現実をしめやかに圧縮した

この記事が参加している募集

私の作品紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?