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詩「逡巡」

静寂の美しさを失念した罪の卵が内臓に巣食って孵化しそうな瞬間に頭痛に襲われ薄い微笑が漏れるのは依然として定まらぬ交点の問いが喚起されたからであって群衆に紛れ込むふりをした咎で骨を貪られる表象が心に咲いたのとは無関係だと認定したくても皮膚を這う罰の予感を退ける清潔さは取り戻せず狭窄する喉で捧ぐ祈りも形を成さずある種の虚しさが口腔で破裂すると懐かしさに満ちた緩やかな憂鬱が生まれそれがあたかも海のようですらあると自覚して初めて極めて私的な罪は真砂になりさらさらと風化してゆく予兆を獲得し静謐な歓喜を回復した、という錯覚が解を遠ざけるのだとしても……

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