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ピン留めの惑星|全アーカイブ

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いつのまにか失くしてしまった“たいせつなもの”たちが辿り着くどこかの星のだれかの物語―。  ◉《大島智衣の読みもの》と《つきはなこの漫画》との週替り交代+おまけ付きでお送りするシ… もっと読む
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#恋

リンコとアスミ(ネーム)

今、新しい漫画について考えていて、やっと1話描いてみました。今度担当さんに見ていただこうと思っているネーム(設計図)です。今後打ち合わせしていい作品に育てていきたい漫画です。ピン留めの惑星マガジン購読者限定で公開します。感想などコメントいただけるとうれしいです。

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うたた寝

(*本編は最後まで無料でお読みいただけます) 隣のデスクでうたた寝を始めてしまった小田島さんを起こさないように、分厚いASKULのページをそっとめくった。寝息がここまで聞こえてくる。 ひとが本当に寝入ったかどうかは、だいたいは呼気でわかる。 「すう」と深めに吸ったあと、「すっ」と息が勢いよく吐き出されると、そのひとは眠りに落ちている。 私はそれを、こんな風に隣で居眠りをする小田島さんの寝息で知った。 今日もオフィスは午前中から人が出払っていて、この空間には小田島さんと私

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乙女の生きざま(リメイク)ー途中経過2ー

こんばんは。つきはなこです。前回に引き続き「乙女の生きざま」のリメイクについてのお話です。おまけは大島智衣さんのお花見エッセイ『春、逸る』です。最後までお楽しみください。

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口実

(*本編は最後まで無料でお読みいただけます) ○映画館のレイトショー/夜 割と混んでいる上映中の映画館の場内。 客席の最前列、いちばん端っこの二席に並んで座り、スクリーンを見上げている男女。 ふたりの頬がスクリーンに反射した光で明るくなったり暗くなったり。 ひじ掛けに置かれた男の手を見る女からの視線。 女の手は膝の上のバッグをかたく抱きしめている。 ○刀削麺屋/同日夜 中国語が飛び交う刀削麺屋のカウンターで麺をすする男女。 男 うまいね。 女 そうここ、うまいん

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「1112324493」

*本文すべて無料で読めます 藤野君がなんでウチに来たのかはおぼえていない。 なんでだか藤野君は、大学を卒業したあとも住みつづけた早稲田の私の部屋を訪れてひと晩だけ泊まっていった。しかも風邪を引いて具合が悪いとかで、来て早々にひとの布団で寝込んだ。 だから、私が記憶しているウチに来た藤野君の姿は、私が敷いた布団にすっかりとくるまって、掛け布団を乱すことなく綺麗にじっと寝込んでいる姿だった。 なんだったのか。 藤野君についてはわからないことが多い。 私はたしか、あの頃藤

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17時16分。

夕方の5時を過ぎて、あと15分でようやく退勤時間だ。 今日も定時でしごとは終わりそう。 労働というゆるい拘束からほっと解き放たれることはうれしいけれど、替わりに別の思いが押し寄せてくる。 今日もこのあと、なんの予定もない。 誰かと会う約束も、行きたいところも、買いたいモノも。 ひとつずつに思いをめぐらせて確かめてゆくけれど、どれも思い当たらない。 このまま家に帰ったとしても、なにをしよう。 Netflixでイッキ見したいようなドラマも最近見つけられていない。 17時1

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あなたの視線(中編)

前編はこちらから ー続くー 。・゚・。。 ・購読特典。。・゚・。・゚ こんばんは。寒い冬には編み目が荒めのセーターを着た大好きな人の、コートとの間に永遠にはさまっていたい大島智衣です。冬も本格的な寒さになってきましたね。 今回のおまけは、「大好きな人を目の前にしたときの胸アツな思い出」として、大島が大ファンである作家・穂村弘さんに読書会でお会いしたときのイタイ……いや、アツイ思い出レポ・エッセイをどうぞ! 巻末にはつきはなこさんの胸アツ☆エピソードもご用意してございま

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strawberry candy

信号待ちをしていると となりの親子連れの小さな女の子が 「青にな〜あれ! 青にな〜あれ!」 と 赤信号に向かってしきりに大きな声でさけんでいた 「こうやってると 青になるんだよ」 彼女は得意げに 嬉しそうに 母親にそう教えてあげていた そうなのか 赤信号はそうやって 青信号に変わるものだったのか──── 小さな女の子は その〈魔法の呪文〉を 懸命に 願いを込めて 唱え続けていた 私は 青になってほしく なかった 願えば届くなら ずっと赤信号のままでいて

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わたしたちの「篠宮くん」

篠宮くんが私の目の前に現れたとき───正確にいうと、私に対面するために7メートルほど向こうから近づいてきた彼が私の視界の端に入ってきたとき、私は咄嗟にそれまで「残りの人生もうどうでもいいや、見えてれば」と自暴自棄に掛けていたブルーライトカットの不穏な色付きメガネをばさりと放り捨てた。 そして、「はじめまして」と挨拶を交わした。にこやかに。感じ良く。 あのとき、私は裸眼で彼の顔はぼやけて全く見えていなかったのだけれど、私にはわかった。 パソコンやスマートフォンから発され眼

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チョコレートケーキの幼馴染(後編)

前編はこちらから -fin- 年末のご挨拶こんばんは。大島智衣です。 今年の秋につきはなこさんと始めたこのマガジン『ピン留めの惑星』。 読んでくださりどうもありがとうございます。 前後編にわたるつきさんのマンガ、いかがでしたか? 幼なじみがいるのって、憧れますよね。私は、はっきりとはいなかったので。 それでも、小学校と学童保育が一緒で近所に住んでいた男の子が、中学に上がって女の子といろいろいろいろ……してるのを知った時は大きくショックでした。私はまだ恋に恋してるような

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マシュマロアイスというの

ときどき想像する。 もしもあと何十秒とか、何分とかで、 じぶんの人生が終わってしまう期限が差し迫ったら。 誰に、何を、伝えたい? やり残したこと、思い残したこと、は? 私は何を、遺す? 「なんにも ないや」 大型の台風が接近中で、空模様が荒れ模様になりつつある夜のバス停で、ベンチに腰掛けながらふと、家に着くまでには溶けてしまうとわかっているのに買ってしまったマシュマロアイスというのを、姿勢悪く頬張りながらふと、そう思ってしまった。 「なにも ない」 帰宅して

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ピン留めの惑星|プロローグ

『ピン留めの惑星』なぜだか昔から、ピン留めというのはすべてどこかへいってしまう。 一体、どこへいってしまうのだろう? 私たちのたいせつな一部だったはずのものたちは。 もしかしたら。失くしたピン留めたちが累々と流れ辿り着き、集まり積もっている場所がどこかにきっと、あるのかもしれない。 どこかの島、どこかの国、どこかの星に。 『ピン留めの惑星』がどこかに。 学生時代、恋多き惚れっぽい男の子が、友人に恋の相談をしていた時に放った言葉が忘れられない。 「だってお前、ここ

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