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「音楽だけに集中できる環境に感謝しています」345が語る、凛として時雨が20年以上続く理由 

本マガジン『いや、ほんと音楽が好き』を監修するピエール中野が所属するバンド、凛として時雨のボーカル&ベースを担当する345(読み:みよこ)さん。

345さんは幼少期からさまざまな楽器に触れ、19歳で高校時代に出会ったTKさんと凛として時雨を結成。2008年にメジャーデビューしてからも、歩みを止めることなくここまで着実に実績を積み重ねてきた。音楽と一緒に人生を歩んできたと言っても過言ではない彼女は、これまでどのように音楽に向き合ってきたのだろうか。

今回は345さんに、自身のプレイスタイルが確立するまでの経緯や凛として時雨の楽曲らしさなどを語ってもらった。

 <文:伊藤美咲 / 編集:小沢あや(ピース株式会社)

345さんプロフィール>
1983年、埼玉県生まれ。2002年に凛として時雨を結成。2023年11月8日にNetflixシリーズ「陰陽師」主題歌『孤独の才望』をリリース。同12月8日に東京ガーデンシアターにて「凛として時雨 Tornado Anniversary 2023 〜15m12cm〜」の開催が決まっている。

幼少期から音楽が生活の一部になっていた

凛として時雨を結成後、ボーカリスト・ベーシストとして20年以上の経験を積んできた345さん。彼女が音楽を好きになるきっかけは何だったのか。

「私は全然覚えてなくて、親から聞いた話なんですけど、子どもの頃、家にあったオルガンを勝手に弾いていたらしいんですよね。その後ピアノ教室に通い始めて、自然と音楽が生活の一部に組み込まれるようになりました」

そんな彼女のルーツとなる音楽はJ-POPだ。激しいバンドサウンドが特徴的な凛として時雨の楽曲イメージからすると、少し意外に思う人もいるかもしれない。

「小学生の頃は兄の影響でB'zやチャゲアス(CHAGE and ASKA)、ミスチル(Mr.Children)などを聴いていました。自分でバンドを始めようと思ったのは、中高生の頃に聴いたJUDY AND MARYがきっかけですね」

バンド活動を通じて辿り着いた自分独自のプレイスタイル

345さんは中高生時代に部活でサックスやギターを経験していたものの、ベースを手にしたのは凛として時雨としての活動を始めてからだ。純粋に「音楽がやりたい」という一心であったことが伝わってくる。

「凛として時雨を結成するときに、ベーシストとドラマーを探すより自分がベースを担当してドラマーだけを探した方が早いとなったんです。あと、私のギターがそんなに上手じゃなかったというのもあって(笑)。ベーシストに失礼な言い方かもしれないですけど、『弦の数が減るなら、私にもできるかも』と思ってベースを始めました」

バンドを結成するためにベースを始めたということもあり、345さんにはロールモデルとなるような憧れのベーシストはいなかったとのこと。

「TKの楽曲やメンバーのプレイスタイルに影響されて、今の自分に辿り着きました。『こういうふうに弾きたい』というイメージがあるというよりは、メンバーから刺激をもらっているうちに、今のプレイスタイルが確立したんだと思います。

TKの楽曲はデモの段階でがっつり作り込まれているので、そこで全体の雰囲気を掴み取って、細かいフレーズはプリプロを通じて直接、例えば『ここは上のポジションで弾いて欲しい』といったようなやりとりをして詰めています。

TKとはもう20年以上一緒に音楽をやっているので、何となく『こういうフレーズが好きだろうな』という好みもわかってきた気がしますね。合ってないときもあるかもしれないですけど(笑)」

バンド結成当初から貫いている「時雨らしさ」とは

「男女ツインボーカルから生まれるせつなく冷たいメロディと、 鋭く変幻自在な曲展開は唯一無二」

凛として時雨の公式プロフィールには、彼らの音楽性についてこう書いてある。345さんは時雨の魅力をこう補足してくれた。

「凛として時雨の楽曲は全体的に攻撃的で、構成も複雑に感じると思いますが、歌はメロディアスな部分も結構多いです。それが時雨らしさであり、良さだと思っています」

長く続いているバンドでは、ライブのセットリストが固定化されたり、初期楽曲をあまり演らなくなる傾向がある。ライブの規模が大きくなるにつれてファン層も変わり、楽曲数もどんどん増えていくため、当然だろう。

しかし、凛として時雨は結成から20年以上が経った今でも「鮮やかな殺人」をはじめとする、結成初期にリリースした楽曲をライブで演奏している。

「初期の曲は、ベースに関して言えば、今でもほとんどアレンジを加えずに演奏していますね。20年以上活動する中で多少なりとも技術面は向上していると信じたいので(笑)、成長に伴う表現の変化はあるかもしれませんが、楽曲自体に大幅な変更はせずに演奏し続けています。

曲数が増えるとセットリストや『どのように自分たちの表現したいものを詰め込むか』を考えるのが難しくなると思いますが、その辺りもみんなですごく熟考しますね。ライブに来てくださる方には自由に音楽を楽しんでもらいたいと思っています。ステージとフロア、両方の熱量でライブが作られていくというのはとても嬉しいですね」

345さんのルーツとなる音楽はJUDY AND MARYをはじめとするJ-POPだ。そんな彼女が目まぐるしく展開が変わる構成やアグレッシブなサウンドが特徴のバンドを組んだことを、不思議に思う人もいるかもしれない。バンド結成時の音楽性や方向性を振り返り、彼女はこう語る。

「TKと『バンドを組みたい』と話していたときはGO!GO!7188やNUMBER GIRLなど、いろんなアーティストのライブを見に行っていましたし、お互いにいろんなジャンルの音楽に触れて育ってきたので、今の音楽性に辿り着いたときも特に違和感はなかったですね。

これまでも、いわゆるバンドの方向性について話し合ったことは一度もなかったと思います。TKから『次どんな曲やりたい?』と聞かれて『激しいやつ』って伝えると、数日後に激しい曲のデモが送られてくる、というやりとりはありますけど(笑)」

音楽だけに集中できる環境に感謝しています

音楽活動をしたことがない人からしても、バンドの継続が簡単ではないことは想像できるだろう。価値観の変化や音楽性の違い、キャリアへの不安など、バンドが存続不可能となり得る要因はたくさんある。そんな中で、凛として時雨がここまで続いた理由は何なのだろうか。

「バンドを続けることは奇跡だとよく言われますが、最近ようやく実感しました。私はこれまで時雨しかやってこなかったので、その難しさがあまりわからなかったんですよね。続けてこられた理由は、『無理をさせられてないから』に尽きると思います。

最初はずっとバイトをしながら活動をしていましたが、バンドをやるという事の方が自分の中で大きな割合を占めていたので、それほど負担には感じていませんでした。活動の中で大変なことがあっても音を鳴らす楽しさの方が大きいので、音楽を嫌いになったことは今まで一度もありません。

作曲をする人は生み出す苦しみなども当然あると思いますが、自由に音楽をやらせてもらえる環境に居られることは本当にありがたいですね。音楽を聴いてくれている方や関わってくれている方達にはすごく感謝しています」

ピヤホンを使うともっと音楽を聴きたくなる

ピヤホンシリーズは、身内の贔屓目なしに345さんも絶賛している。バンドサウンドの低音を担うベースの音も、しっかりと聴くことができるイヤホンだ。

「ピヤホンシリーズはもっと音楽を聴きたくなるイヤホンだと思います。重低音もしっかり聴けますし、いろんな発見ができるんじゃないかなと。ちょうどこの前、『still a Sigure virgin?』(凛として時雨の4thアルバム)を久々に聴いたんですけど、よかったです。レコーディングの状況もどんどん変わっているので、他の作品も聴きたいですね。次は『#4』を聴いてみようと思います。

11月にリリースされる新曲「孤独の才望」の中には、繰り返しに聞こえるようでも実は変化している部分があったり、怪しげなベースフレーズがあるので(笑)、ピヤホンでも楽しんでもらいたいですね」

また、凛として時雨は12月8日に東京ガーデンシアターにて「凛として時雨 Tornado Anniversary 2023 〜15m12cm〜」を開催することも決まっている。メジャーデビュー15周年記念ライブへの意気込みを最後に語ってもらった。

「2023年の時雨はすごく活動的でした。まさに『今しか見られない時雨』が出来上がっていると強く感じているので、その姿を12月にみなさんと共有できたらいいなと思っています。ぜひ楽しみにしていてください」


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