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ニュージーランド パイロットとしてのキャリアアップ 2

この20年よくいただく質問のなかに年齢の話がある。具体的には

「私はすでに30を超えているのでエアラインで雇われることはとても難しいと言われた」とか「すでに30後半ですが日本では無理なのですが海外はどうですか?」とか、、、

「私の経験、若しくは私の学生たちを見ていると全く問題ありません」 と答える。

ただしいくつか条件があってそれを今からの文章で読み取っていただきたいのだ。

まず海外なら年齢は気にしないか?ということだがニュージーランドで雇用の際、年齢が高いからという理由で採用を切ったりした場合は違法になります。だから面接官や会社はその人の年齢、性別、人種につては絶対に聞いてこないです。実際に私と同じ同期入社の人で50才のひとがいます。又、ニュージーランドでの面接の際にも一度もこのことについては聞かれたことまありません。日本くらいでしょうか?実際に日本のエアラインの採用担当に聞いたことも何度もありますが、年齢を気にしているのは日本くらいなだけです。ここだけ聞けば差別に思えますが いかがでしょうか??こういう話をまた聞きにしたフライトスクール、元JALパイロットの何々さんが、、、とか、パイロットとは無関係の人たちがあなたたちにこう言うのです。

「30才超えてたらエアラインは無理ですよ」っと。それでみんな怖気づいてしまう。

私の話をすると、私がパイロットになろうと思ってニュージーランドのフライトスクールに通ったのが26才、ニュージーランドの事業用、双発計器飛行証明、教官免許を取得したのは29才でした。今まで沢山の日本人学生を見てきましたが、100人以上の生徒を見てきたうち、70%近くは30才前後、30台後半で始めた方もいますが、ほとんどすべて95%以上が、日本、海外で無事にエアラインパイロットになってます。そもそも海外の学校で自費で来る生徒さんは既に自社養成や航大などのチャンスを無くしてる人たちで、訓練費捻出の為、大学卒業後5年ほど一働きした人たちがほとんどですね。

いったいこの30才以上は難しいというのはどこから来るのでしょうか?これにはちゃんと理由があるんです。単にこの部分だけを採用担当とディスカッションしたら30才以上は難しいといわれてしまいますが、この話を実際に担当者に問いただした際にはちゃんとコンテクストがありましたよ。

パイロットの技量は最初のころは、全くスポーツと同じだと思います。若ければ若いほど覚えるのも早いです。年をとると嫌なことにこの点にかけては本当に若い人には勝てませんよ。ちょっとスポーツをする方は実感いただけると思います。実際に17,18才くらいの学生と飛んだ時に嫌というほど思い知らされました。とにかく覚えるのが早い!!その当時 私は30才全般でしたが、それでも彼らの様に覚えるのは無理だと感じました。また他の30才前後の学生と比較すると確かに明らかな差があるんですよ。エアラインでのトレーニングは時間が限られており、何回も同じトレーニングをしてくれないので、ある程度までに覚えられないと クビ ということになります。それを採用担当者が恐れているところです。だから全般的に押しなべて30才以上は云々ということになるのでしょう。

あとは こんな事を言う人もいます。「40才の人を雇って訓練し定年まで働いてもらって長くて20年。どこの会社も20代のパイロットを雇った方が 会社として長く働いてくれる

うーん、 確かに大昔はそうだったかもしれないけど、今の世界中のパイロットは定年まで同じ会社で勤め上げるようなcompany orientated の人は、ほとんどいないと思います。皆んなcareer orientated, family orientatedですよ。特に年齢が若いうちはその傾向が非常に強い。だから同じ会社に10年といない(よほどその会社に引き留めるだけど魅力があれば別ですが)いやほとんどのパイロットが5年でほとんど流れてしまいます。長く働いてもらって資金を回収しようと考えるのは今からの航空業界では不可能です。景気が悪いときは確かにパイロットのターンオーバーは少なくなりますが、それでも2000年前後の不景気の際でもNZではみんなキャリアステップの為に、盛んに動いていました。

不思議なことに今までの私の学生でエアラインに行くのに苦労した人たちのほとんどはまだ30才前、20才前半くらいの方が多いのです。とても不思議です。

私が見る限り、大きな差は

社会経験

この一言につきます。やっぱり、年齢を重ねて社会である程度もまれると、仕事の要領とか人付き合い、真剣度が全く違います。エアラインの飛行機は構造上二人で操縦するようにできています。また実際にはCAがいたりするのでコミュニケーション能力、people skillが重要なファクターになってきます。操縦技術だけではないんです。このあたりが年齢を重ねて社会にもまれていると上手に自然とさばけるようになっている。エアライン機は二人で操縦するので今まで乗ってきた小型機とは操縦が全く違うのです。また優れたオートパイロットもついています。これを使ってマネージメントする能力の方が重要なのです。そうでなければ現役で飛んでいるキャプテンたちより入社したばかりの若いFOに左席(コマンド)を譲ることになってしまいますね。経験を積めば積むほど、この辺りに大きな差が出ているのです。これをenable skill and situational awarenessと言いニュージーランドで学びました。ごく簡単にいうと、enable skillというのは実際のmanipulationでその飛行機に慣ればなれるほど良くなります。自動車の運転と同じですmotor skill に近いです。しかしsituational awarenessというのはそうはいかず、

1、経験、

1、知識、

3、コミュニケーション能力

で決まってしまいます。自動車の事故率も30台を超えると急激に低くなるのとおなじかもしれません。(このあたりの話をすると、とまらなくなるのでここまでにします。)

もちろんこのenabling skill はある程度必要ですが、それよりもこのSA(situational Awareness)を形成している要素三つに注目して全体的なパイロットスキルを上げて若造(young pups)と 対峙しなくてはいけないのです。特に機長になるには自分だけのSAだけでなくFO, CA、管制官、会社すべてを一つのチームとして捉え、チームとしてのSAを上げていくスキルが必要です。

次によく聞かれる質問が、

「女性だとパイロットに成りにくいんですか?」という話。

日本では女性のパイロットはまだ珍しいですが、NZでは沢山います。ニュージーランド航空でも三分の一のパイロットは女性です。海外のエアラインでは珍しいことではありません。沢山の女性キャプテンが飛んでいてみんな素敵な人が多いです。一緒に飛んでいてドキドキするような人もいます。私の生徒でも、女性でちゃんとエアラインパイロットになっています。全然問題ありません。

ただし、女性特有の問題があり、それを頭に入れていないといけないと思います。男性も同じですが どちらかというと女性の方がその傾向が強くあり、会社や社会がうまくサポートする必要があると思います。

それは結婚問題

20代後半、30代になると間違いなく女性はこれで悩みます。パイロットキャリアか結婚か。またその後も出産や育児で本業のパイロットを続ける難しい時期がある。女性でパイロットに進む方はここに注意した方が良いと思われます。旦那さんがパイロットキャリアに対して理解力があり、協力してくれる人であれば、鬼に金棒ってところでしょうか??

あとは育児の方ですが、これは会社や社会がサポートしない限り難しい問題で私がどうのこうのいう権利はない。ニュージーランド航空では一年間の育児休暇が認められており、その間もちゃんと100%の給料が出ます。だから女性がパイロットとしてキャリアを積みやすいんだと思います。またKIWI husbandといってこの国では女性が働いて 男性が家の仕事をすることが普通な文化があります。私も普通に家事をしますし、自慢じゃあないですが、料理は妻より上手いです。

そういえば、エアライン面接の準備をしていた時の質問の中にこんな変な質問がありました。

’What do you think about women in aviation ?‘’

質問の意図が全く読めず、私はこう返しました。

I think its great ! well, But, I dont have much experience for dating. Would you tell me your experience so that i can learn?

と答えたら 大笑いされました。バカバカしい質問でこちらを困らせようとしたんだと思いますが、テキトーに答えて難を逃れました。男性もきちんと考えておく必要がありますよ。これからのパイロットの世界は男性だけの世界ではないです。


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