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2022年を振り返って

2022年を一言で表せば、整えた年だった。39年間、健康については特に手入れもせず、錆びついていた状態は毎年の健康診断の結果に表れてきた。仕事はといえば、2020年3月に白紙から立ち上げた、いまの組織は、当初の買収機能に加え、ベンチャー投資、資本提携、さらには新規事業開発まで手掛けるようになり、組織も人材も複雑かつ多様になってきた。次の10年を見据えて、一度とっ散らかってきた状況を整える。そういう段階にあったのだろう。

昨年を表す漢字一文字

健康

健康診断といえば脂質異常症。毎年、中性脂肪値が抜群の跳ね上がりで、健康管理部門に注射器片手に追い回される日々だった。2022年も例外ではなく、医者にかかるよう催促される。例年であれば、「体質だから仕方ない」と見て見ぬふりをするところ、今年は近所のクリニックに足を運ぶ自分がいた。40歳一歩手前という年齢が、「30代のうちに精算しておくか」という気を起こさせたのか、はたまたこのまま放置すると確実になるであろう生活習慣病が、日々コロナ重症化の要因として叫ばれているせいだろうか。自分のことなのに、何がスイッチをon/offにするのかは、39年経ったいまもよく分からない。

医者から聞いたのは、実に簡単なこと:エネルギーの入りを減らし、出力を増やす。まるで機械だ。

昔痩せ型だったひとは、代謝が当時の体型を引きずって低いままであることが多い。歳をとるにつれてその代謝も落ちていくので、同じ食事と運動を続けていると、入りが同じで出口が小さくなるのだからググッと太る。その結果、比較的簡単に生活習慣病になってしまう。だから、当たり前のことだが、節制に努め、これまで以上に運動をして代謝を増やすこと。

そこで実践したのが、脂質制限筋トレ。制限は軽めに、例えば牛肉はロースではなくもも肉で、というレベルの心掛け程度だが、始めてみると食の好みがどんどん脂質が少なくなる方向に変わってゆく。我が家の食卓からはロース肉が消え、私の皿からは唐揚げが消えた。

筋トレは始めて良かったと心底思う。代謝を増やすには筋量の多い下半身から、ということで、フルスクワットから自分の筋トレ人生は始まった。思えばバンクーバーに赴任していたとき、当時の上司からは熱烈に勧められていた筋トレ。当時はやる気の芽も出なかったのに、いまでは週に3回、脚、胸、肩、背中、腕と虐めながら数値の上がり具合を喜び、終わり際にプロテインを飲む生活。おかげで、冬着る物が一枚減るまでにはなった。

脂質制限と筋トレ以外にも、毎日の炭酸水で腸環境は劇的に改善したし、起床時のヨガ、ストレスで調子崩しそうなときの温泉・サウナなど、2022年は健康を整えるために様々なことに取り組み、いずれも習慣にすることが出来た。

仕事

幸か不幸か、いまの組織を立ち上げたのは、新型コロナが最初に世界的な広がりを見せたタイミングと重なった。それが幸いだったのは、感染症の蔓延でビジネスのテンポが若干ゆっくりになったことから、じっくりとガバナンスの立ち上げや個々の案件対応に時間を使うことが出来たことにある。それが不幸だったのは、全てがリモートになったので、とりわけ組織作りの要となる人材採用で対面での対話ができず、画面越しに半ば賭けのような形で採用を進める必要に迫られていたことにある。ただ、幸いにも極めて優れたヘッドハンターを起用でき、素晴らしい方々を採用することが出来た。まさに不幸中の幸いといったところ。

AccentureとMcKinseyで買収を手掛けてきたいまの上司(日本語も富士通も馴染みがない)と私(日本語と富士通にしか馴染みがない)。たったふたりから始まった心細い旅路も、いまでは5チーム、60名程のメンバーと一緒に歩むまでになった。富士通グループの買収を手掛けるという立ち上げ当初の目論見は、ベンチャー投資を行うためのCVCの設立・運用、資本提携や合弁事業を促進するためのCapital Alliancesチームの新設、さらに新規事業開発に特化したLaunchpadの設立・運用など、拡大の一途を辿った。いまでは国籍数も二桁を超え、専門性も経歴も言語も文化も何もかも異なる様々な人間のサファリパークが、ここにはある。そのなかで、いかにしてフェアで透明性が高く、みんなが気持ちよく業務に打ち込めるような職場環境・制度を作れるかが、立ち上げからこれまで、常に自分に課せられたミッションだった。

ひとを相手にするこのミッションに正解はないし、終わりもない。やらなければと思ったことを着実に実行し、実行し、また具合を見ながら実行してきた。その態度はこれからも変わらないと思う。

ただ、昨年末に、自分のなかで「カラン」と、何かひとつの段階が終わったような音がした。それはいまの組織が年次で世界中のメンバーを集めて行っているイベントでの一コマだった。イベントを締めくくるディナーでは、新たにその年の貢献を讃える表彰が行われることになっていた。表彰は、富士通が行動規範として求めるaspirationやtrust、empathyを体現した活動を対象に、個人やチームに与えられる。

そこで私の名前が呼ばれた。

まさに青天の霹靂で、「表彰者への賞品(Lamyの万年筆)選んだのは自分だけど良いのだろうか」などと思ったのは覚えているが、それ以上に会場内でメンバーがくれた拍手がいつまでも頭のなかに反響していた。そしてこの瞬間に音が鳴った気がした。「あぁ、もう周りにはこんなに素晴らしいメンバーがいてくれるのだ。もう舞台回しは整っているではないか。これで上司と私とで引っ張っていた段階は終わり、このチームは次の段階に進むのだな」と。感慨深いものであったと同時に、次の段階に向けて自分のなかでスイッチが切り替わった年末の一コマだった。

整うということ

2022年は、健康と仕事を中心に、物事を整えた年になった。「整う」という言葉には、物事をきちんとまとまった状態にする、調和をもたらすという意味のほかにも、必要なものを揃えるという意味もある。

整う
1. 必要なものがすべてそろう
2. きちんとまとまった状態や形になる
デジタル大辞泉

40歳を前にし、仕事の区切りも意識したことで、否が応でも次の段階を見据えることになり、そのために必要な準備、基盤作りに勤しんだ。2022年はそんな一年だった。

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