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pilgryNOTE月報24.02|見えないものに、耳をすます

全国各地の宗教的な場にまつわる「音」のプラットフォーム「pilgry」を企画・運営する遠藤卓也による活動月報(「TMR編集室月報」より改題)

TMR/音の巡礼のこと

2月は短い。それでも閏年だったので、存在してくれた29日に大きな感謝をおくりたいほどに忙しなく日々が過ぎ、何かを録音したりする余裕がなかった。そんな中、二つのワークショップに参加できたことがよかった。

ひとつめは、「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」。その存在を知りながらこれまで体験したことがなかった。以下、公式サイトの説明を引用する。

ダイアログ・イン・ザ・ダークは、視覚障害者の案内により、完全に光を遮断した”純度100%の暗闇”の中で、視覚以外の様々な感覚やコミュニケーションを楽しむソーシャル・エンターテイメントです。

視覚に障がいを持つナオキさんの案内で、まっくらやみを歩いてさまざまなことにトライした。
例えば「電車に乗る」というミッション。なんと施設内に本物の電車がある。もちろん走行はしないが、原寸大の電車に乗るまでの体験が可能だ。何も見えない状態でホームまでたどり着き・ドアをくぐる・車内でのポジションを決める、、、すべてが難しい。(普段見えている自分にとって)見えないことはこんなにも不安なのか。
駅では視覚障がいの方のためのガイドが色々あるのもわかるが、それでもラッシュの時間や急ぐ時など、多くの危険があるだろう。これまであまり想像できていなかった世界にはじめて気付いて、何故だか自分が情けなく思えた。

そんな中で、当たり前ながら「音」情報の有用性を実感する。「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」はチームで進むので、初対面同士でもどんどん声をかけあって助け合う。仲間たちが発する「音」が頼りだ。

ナオキさんは「音」以外の情報として「気配」を挙げていた。「気配」とはなんだろう、と思った。呼吸や動作による空気の動き?声以外の「音」も含まれる気がする。しかし本当にナオキさんは「気配」を感じて状況判断を行なっているようだった。「気配」を感じることに、慣れや熟達があるのだろうか。

微かな空気の動きや、目立たない音。それらを感じとる力が、人間にはあるのだ。


もうひとつは、津田貴司さんのワークショップ「みみをすます」。津田さんは以前、hofli名義で「お寺の音楽会 誰そ彼」に出演してくださっている。いつか参加してみたいと思っていながら、タイミングが合わないままに津田さんの拠点が関西に変わってしまった。しかし今回は横浜市のあざみ野で開催されるということで参加してみた。

自然環境の中に入っていくのではなく、あざみ野という街の音を聴くワークショップ。駅前の喧騒の音を聴くところからのスタートだった。
近くに券売機や改札があり、視覚障がい者のための誘導音がとりわけ耳に入ってきた。普段は本当に意識できていなかった音世界があるのだと改めて気付く。

数名で街を歩きながら、各所の音を聴くということがこんなにも楽しいなんて。時折、感じたことをシェアしながら、いろんな地形を歩く。最初は音をみつけて、名前のつけられる音を聴いていく。

「お す い」の音

しかし、世界には必ずしも名前のつけられる音ばかりじゃない。この、「じゃないほう」の音を聴くこと。なかなか難しいのだけど、それをしようとすることが、なんというか心地よかった。いつかそんな音も録れたらいいなあ。

みみをすまして歩く一行

お寺で録音する際、どうしても「お寺らしい音」を意識して、お経を中心に据えたくなる。でもどちらかと言えば、お寺で録音する時に「じゃないほうの音」を収めたいという思いがある。お経や鐘はあくまでも録音のきっかけであり、実はそれらもお寺の音風景の一部。そんな音をいつか録れるようになりたいなあと思う。

2月に参加した二つのワークショップで、「見えない音世界」「捉えにくい音世界」の存在に気付けたことがよかった。


お寺のこと

ポッドキャストを一緒にやっている、リヴオンのてるみんにお誘いいただき、2/22に行われた「お寺からつながるグリーフケア in 埼玉 〜 大人のための寺子屋」という学びの集いに参加させてもらった。

埼玉県日蓮宗青年会さんが、リヴオンに依頼してグリーフケアの連続講座を開催したということが素晴らしい!熱意ある真面目な青年僧の皆さんが頼もしい雰囲気だった。(図々しく打ち上げにまで参加して、皆さんと楽しく飲んだ笑)

会の中で「未来の住職塾NEXT R-6」についてもご紹介いただけたので、一人でも興味もってくれたら嬉しいなあ。


てるみんと一緒につくっているポッドキャスト「ゆるやか死生学」の新エピソードが公開となった。
「死は乗り越えるもの?」というテーマを探求してきたシーズン1もいよいよ終わりを迎える。ゲストとして、37歳の時にお母様を亡くされた経験をもつ荒谷直美さんをお迎えしておしゃべりをしている。
「誰もが先生 誰もが生徒」を合言葉とし、他者の経験に学ぶこの番組の心髄とも言える回。雨の日に3人で、静かにたのしく録音した良き空気感が詰まっていると感じる。

また、てるみんが代表をつとめる一般社団法人リヴオンが、「子どもの自殺予防教育・自殺による死別経験をした子どもへの支援」についてのクラウドファンディングに挑戦中。いつも大切な取り組みをありがとうと頭のさがる思いで、自分も僅かながら支援させてもらった。

もし番組を聴いて何か共感するところがあれば、ぜひページを覗いてその想いに触れてみてほしい。


クラファン繋がりでご紹介。テンプルモーニングラジオにもゲストで出演してくださっている京都・瑞泉寺の中川学さんが、豊臣秀次公430回忌にあわせて、自坊の寺宝を修復するプロジェクトをなさっている。

自分は2022年の夏に取材させていただいた際「豊臣秀次姫妾和歌」の掛け軸の話をお聞きして、いつかみてみたいと願っていた。微力ながらご協力できることが嬉しい。

TMRでは↓のエピソードで秀次公の歴史を語っておられるので、興味のある方は是非。


2023年に『地域寺院』誌に寄稿した取材記事を二つ、未来の住職塾noteに転載させていただいた。
世のお寺にもっと『地域寺院』を知ってもらうために、という約束でWeb転載を許可していただいていたが、『地域寺院』自体が3月号で終了することになってしまった。少しのお役にも立てなかったような気がするし、こういう良心的な媒体が続けられなくなってしまうということが寂しい。

Case05|古き良き「お講」文化を今の光で照らしだす(黒部市 本願寺派 善巧寺 雪山俊隆さん)

古くから続く「お講」をどのように継続していくか?
各地で人員不足や食事提供の可否で悩む声をよく聞く。様々なイベントを経験されてきた雪山さんが、お講をベースとした「定例法座」に力を注がれている点に注目した。多くのご寺院の参考になるお話しだと思う。


Case06|現代の人々の生活に、お寺がとけこむために「行い」が導く仕掛けをつくる(長崎県 大村市 真宗大谷派 正法寺 長野文さん)

この取材でのお話をヒントに「自坊のお寺のリズムを見直そう!」という個人ワークを思いついたのだった。1月〜12月までのリストにお寺での行事やイベントごとを書き出して、それぞれの月の忙しさを%であらわして書き入れるというもの。すると、何かと詰め込んでしまっている月がわかるので、その月にやっていることの中に、他の月に移動できそうなものがないか発見することができる。自身で書き出してみた後に、ご寺族にも共有することで、お寺の年間のリズムをみんなで改善する糸口になる。
自分の講義では、参加者の皆さんに実施してもらっているが、寺院ごとに特徴が出るのがすごく面白い。


取材記事|兵庫県 浄土真宗本願寺派 浄福寺 岩田英証さん

『月刊住職』2月号の連載にて、兵庫県 浄土真宗本願寺派 浄福寺の岩田英証さんにインタビューした。ご自身の職能や特技をお寺に活かすこと。公益性を意識して、新しいご縁づくりに繋がるように目指すことで、参加者も関係者もお寺もみんな嬉しい活動になっていくと感じる。お寺で何かを始めたいとお考えの方にはぜひ読んでみて頂きたい。


音のこと

2月3日 (土) 、七針でMOON FACE BOYS碧衣スイミング&ミノルタナカのWレコ発Live最高に楽しかった。

ハイボールに沈んだ夕陽余熱」と歌う竹下センパイのポエジー。

やんちゃカラオケHIPHOPで「穏やか それこそが ライクアローリングストーン」とkickするタナカセンパイのフロウ、、、。
どちらも人生の極意を教えてもらったような気がして、忘れがたき夜となった。


2月14日(水)お誘いあって、ビルボード横浜で野宮真貴さんのバレンタインライブへ。

矢の刺さったデカいハートを頭につけて歌い踊ってかっこいい60代は他にいない。唯一無二のパフォーマンスだった。

信藤三雄さんがやってたスクーターズをゲストに「東京ディスコナイト」「東京は夜の7時」、コーネリアスがギター・ボーカルではいって「マジックカーペットライド」「ハッピーサッド」はとても盛りあがった。客席にカジくんもいて、鍵盤は堀江博久さんだったし、90s渋谷系カルチャーの同窓会という雰囲気。

コーネリアスのギターがほんと良くて、思わず30周年ライブのチケットを買っちゃった。周年ライブなら初期の曲もやってくれるかもという期待とともに、、、。「Silent Snow Stream」とか、すごく好きだった。今聴いてもいい。

そして幕間のMCでは信藤三雄さんはもちろんのこと、川勝正幸さんの名前も出てきてグッときたなあ。お二人の作品・執筆にまだまだ触れたかった。

スクーターズの曲は学生の頃、クラブイベントに行くとほぼ必ずかかっていたように思う(2000年代前半)。自分は全然リアルタイムじゃなかったけど、モータウンサウンドという普遍的な音楽をベースとしているからこそ、いつ聴いてもきらめいてるんだなあ。久々に聴いたけど相変わらずよくって、ついついレコードを買ってしまった。


now playing #loureed


High Llamas新譜うれしい。すごくいい。ヘイ・パンダ!


ちなみに今月の月報のタイトルは、こちらの本からの引用。久々に読みたいな。


味の巡礼

  • ニューニコニコ(新橋)

  • かに愛知屋(伊勢佐木町)

  • 中国料理 丸勝(東戸塚)

  • ホッピー仙人(桜木町)

  • とり健(茅場町)

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