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TMR編集室より|22.04.20 心の隅の話をしよう

【TMR編集室より】ポッドキャスト「Temple Morning Radio」の編集・配信を担当する遠藤卓也がお届けする、お寺やお坊さんや仏教文化に関する副読的エッセイ

カネコアヤノさんの新曲「わたしたちへ」のサビの歌詞、2022年の今のキブンをよくあらわしているなあと感じ入る。

私でいるために心の隅の話をしよう
変わりたい 変われない
変わりたい 代わりがいない私たち
私たち

カネコアヤノ「わたしたちへ」

「心の隅の話をしよう」というところ。「心の隅の話」は今に始まった流行りとかじゃなくて、いつでも巷間でみんなそれぞれやってきたことじゃないか。なぜ「心の隅の話をしよう」と歌う彼女に、今の「風」のようなものを感じるのか。

例えば去年『東京の生活史』という本が話題になって、「聞き書き」という手法が注目されていることもあるかもしれない。

自分のまわりでは、縁あって協力させていただいているSHIBAURA HOUSEさんによる nl/minato リサーチプロジェクトで、正に「心の隅の話」をヒアリングしている。
友人たちとやってみた、それぞれの「グッド・アンセスター・ダイアローグ」インタビューも、結局「心の隅の話」になっていく。
Temple Morning Radioだって、お坊さんたちの「心の隅の話」を5日間にわたって聴いていくポッドキャスト番組に他ならない。

なんというか、隣人の他愛ない生活の話やそれぞれの人生の選択に共感し、ある種の癒やしのようなものを実感する、そんな発見があったような気がしている。
誰かの「心の隅の話」がなぜ、"共感や癒やし"につながるかというと、そこにはどうしたって「代わりがいない 私たち」がたちあらわれてくるから。

カネコアヤノさんの曲を聴きながら、そんなことを思った。


昨日は、雑誌『月刊住職』の連載原稿のため、福島県耶麻郡猪苗代町 真言宗豊山派 壽徳寺 松村妙仁さんにインタビューしました。

妙仁さんは自坊の寺報に、毎号『ごえんびと』というインタビュー記事を連載しています。妙仁さんが日々の活動の中で知り合った方々にお話しを聴いて、文章としてまとめています。
ご自身はほとんど話さずに、相手の思いをあるがまま聴くことがグリーフケアの訓練にもなっているというお話しが印象的でした。

コロナ以降、お寺で1対1の対話の会や、住職がお檀家さんにインタビューを行い、映像や音声をお寺にデータ保管していくような取り組みをよく聞くようになってきました。

日々、お寺に来られている方々の苦に目を向け続けているお寺さんが、「心の隅の話」をしてもらうことに力を入れているのは、やはりどこか「弱さでつながる」ような場が求められている証なのかなと思うのです。
お寺は「心の隅の話」をするのにぴったりの場所で、話に耳を傾けてくれるお寺の人たちがそこにいることがありがたい。
どちらも弱いまんまで、声を伝え合えばいい。仏様が見てくれているのだから。

毎日さまざまな人の「声」を聴き続けている、松村妙仁さんの「声」は、2020年6月1〜6月5日配信のTMRで聴くことが出来ます。ぜひ!


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