書評-アガサ・クリスティー『なぜエヴァンズに頼まなかったのか?』
どうも、こんにちは。
今回読んだ本の書評をしたいと思います。
アガサ・クリスティーについては説明不要かと思います。彼女の50年に及ぶ作家生活の中でノンシリーズものは少なく、『オリエント急行の殺人』や『ABC殺人事件』などのポワロといったシリーズものが有名ですね。
『なぜエヴァンズに頼まなかったのか?』(Why didn't they ask Evans?)は、ノンシリーズとしては『そして誰もいなくなった』と並ぶ人気作品です。私がこの作品を知ったのは米澤穂信さんからで、氏が幼少期に読みミステリに興味を持ったきっかけになった本です。古典部シリーズの『愚者のエンドロール』にてオマージュされていましたね。
ウェールズの田舎町で、元海軍で牧師館の息子であるボビイと、名家の娘で好奇心旺盛なお嬢様フランキーが、町で起こった不可解な事件を追うバディものです。タイトルにあるとおり、事件の犠牲者が死に際に放ったこの言葉が事件の真相を解くガギを握っていますが、終盤までこの謎が明らかになりません。アメリカではThe boomerang clue(ブーメランの手がかり)という題名がつけられているとおり、このメッセージを起点に一進一退を繰り返す展開は、手に汗を握ります。
私はあまり古典的な海外ミステリを読んだことがなく、登場人物の名前や関係性を覚えるのにノートに書き留めたり、どこで伏線が張られていたのかページを戻って確認したりしながら読みました。その過程も含めて面白く、作者と読者の知恵比べという、ミステリが持つ醍醐味をふんだんに味わうことのできる、良質な読書体験でした。
次も米澤穂信さんつながりで、アントニイ・バークリーの『毒入りチョコレート事件』を読みたいと思います。興味のある人はぜひ。
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