三題噺⑤

練習をしてみる。多分やり方間違ってるよって話もある。つづけることが多分大事なので,やってみる。

※ ライトレというアプリを使ってお題を決めています。

お題: 復讐 聖書 眠り姫


「ヒカリが,久しぶりにこっちくるって」

セイジは俺の顔を見るや否や言った。セイジとヒカリは遠縁の親戚同士だ。そして俺とヒカリとセイジは,3人でこの片田舎の町で幼稚園の頃からの幼馴染だった。

ヒカリは3年前に引っ越して以来,1年に2回ほど形式ばった手紙のやりとりをするくらいだった。俺の中でのヒカリはまるで眠り姫みたいに3年前のまま,心の大事な部分に寝かせて,大切にしまってあった。

俺がヒカリの存在を繊細に扱うのには勿論理由があセイジうまでもなく恋愛だ。

俺は3年前のヒカリが引っ越す前日,ヒカリに告白して「次あった時には結婚の約束をしよう」だなんて約束をしてしまったのだ。

3年前とは言え,小学生の時の話だ。俺も随分恥ずかしいことを堂々とやってのけたものだ。次にヒカリに会うのは,もっと先だと思っていたのに…

ヒカリの笑顔を思い出すと胸が苦しくなる。今でもまだ好きなんて,俺も随分ピュアな野郎だ。


ついにヒカリと会う日がやってきた。高鳴る心臓。セイジにあのことは言っていない。どんな顔をして会えばいいだろう?

待ち合わせの場所に行くと,の事をとセイジはもう待っていた。手をつないで。

セイジは俺を見るなり嬉しそうな顔でヒカリの手を引いて,俺の元へ駆け寄った。

「いつ言おうか迷ってたんだ。実は俺たち,1年前から付き合ってるんだ」

そう言うとセイジはにやりと笑った。ヒカリは恥ずかしそうに,少し気まずそうにしながらうつむき加減でほほ笑んだ。

俺はすぐに分かった。これはセイジの復讐だと。

俺は3年前,セイジがヒカリの事を好きだと知っていた。

知っていたにもかかわらず,俺はセイジを裏切って抜け駆けしたのだ。

俺は胸だか腹だか体の奥の方がグッと痛くなって,「調子悪いから帰る」と取り繕う事もせず家に帰った。

家に帰ってしばらくベッドに寝そべって天井を見つめた。

しばらくして床に落ちていたジャンプを読んだ。毎週聖書みたいに大事に読んでいるジャンプも僕を救ってはくれなかった。

友情を破った代償に刺さったトゲのせいか,身体がどんどん重くなる。

このまま眠り姫になってしまえばいいと,そう思った。

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