「調子を良くすること」

4月からティップネス丸の内スタイルで、レッスンをしています。最近のティップネスは会社の方針として、その人その人の「調子(コンディション)を良い状態にすること」に注力をしているとうかがいました。ボディワークとしてのピラティス(エクスパンショナルピラティス)は、トレーニングであり、コンディショニング・セラピー・トリートメントであり、メディテーションです。そういった流れの中で、私にレッスンのご依頼を頂いたと思っています。フィットネス要素の強いピラティスはピラティス全体の中でもメジャーだし、「こういうピラティスもあるんですよ」という紹介をできると嬉しいです。

「自分の能力を高めること」と「自分の調子をより良い状態にする(高める・保つ)こと」は両立すると思っていますが、私の場合、後者をより大切に考えています。

昔は「調子を悪くしてでも、能力を高めたい」と思っていました。過去を振り返ると格闘技やアイスホッケーを学生時代にはしていましたし、大人になってからもボディワークに出会うまではウェイトトレーニングを熱心にしていました。その頃は「能力を高めること」が人生において何より重要でした。スポーツやフィットネスの分野に限らず、ビジネス書を読んだり、自己啓発セミナーに行ったり、能力を高めようという目的であれこれと努力をしていました。今そういう努力をしている人に怒られてしまうかもしれませんが、人間はそんなに変わらないし、能力は期待するほど高まらないというのが僕の考えです。能力はもちろん高まりますが、ゲームやアニメ、ハリウッド映画の世界のように驚異的に高まることはありません。

成長する程度を過剰に見積もって、期待しすぎている人が多いのかなと思います。時間もかかるし、小さな成長に喜びや楽しさを見出せないと、なかなか努力は続かないと思います。大人になってから英語などを勉強すると、そんな感じではないでしょうか。自分自身の身体、健康についても同じです。

フィットネスの世界を眺めてみると、「調子を崩してでも、成長したい」と努力を続けている人が少なくありません。腰が痛いのに重たいバーベルを担いでいる人、膝が痛いのにエアロビクスをしている人、悩みごとを抱えながらバイクを漕いでいる人...。努力をすること自体は楽しいことですが「調子を良くすることを努力したらいいのに」と、私は思います。調子を良くすることに優先順位を持ちつつ、トレーニングしていくことで成長していける面白さがボディワークとしてのピラティスには存在しています。

例えば、ロールアップという仰向けに寝た状態から起き上がるエクササイズがあります。何も知らずに動きを大雑把に観察すると、腹筋運動(シットアップ)に似ています。腹筋運動の目的は、腹筋(腹直筋)の強化です。ロールアップは、背骨を伸びやかさにすること、しなやかにすること。背骨の柔軟性を獲得することが最大の目的になります。ロールアップは背骨の調子を良くするストレッチ(自分の調子をより良い状態にする)なのです。その上で、副産物として他にも色々と得るものもあったり、筋肉の強化(自分の能力を高めること)もされています。

心理学系の先生から「状態管理がすべて」と教えてもらったことがそう言えば、随分と昔にありました。トレーニングに限らず、生きることそのものがそうなのだと思います。

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