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無題

短編
無題

誰とでもこうしてきたって

どこか寂しそうな顔

かすかに触れるだけのキス

会話に花が咲いても
どこか心のすみが冷たくて

別れが見えているから
思わず「楽しいね」じゃなくて「悲しいね」と、こぼしてしまった

少しの沈黙

好きになってほしい

寂しそうな目を見つめながら
心の中でそう思った

.......

あぁ、どうしてそんなに
寂しそうな目をするのだろう

君は一体どこを見つめているんだろう
ここにいるのに、ここにはいないみたいだ

今こうして確かに手を繋いでいるのに

君にとってこれは、なんの意味もない
なんの価値もないことなんだろう

やわらかな手の感触を、皮膚の上から感じてみる

ああ、こんなにも愛おしい

私は何も言えず

ただただ、君の横顔を見つめていた

.......

白くてやわらかな肌
触れたら崩れてしまいそうな脆さ、儚さがある
温もりは感じない
だけど冷たくない

やわらかくて
痛みを知っている優しさがある

必要以上に傷つけない
必要以上に優しくしない
そんな風に手を握る、キスをする

大きな瞳は憂鬱の影を落として
何も映さない

「瞳の中に沈めてくれ」と誰かが歌った

私はただ、君の瞳に映りたかった

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