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『雪国』を読んだ

2022/9/17、読了。

チャンネルを回していたらNHKが本作をドラマ化しているのをたまたま見つけ、そのまま何となく観ていたのだが、主演の高橋一生さんと奈緒さんがあまりにも良かったので原作を読んでみたいと思い購入。

ぼくはドラマ視聴時、奈緒さん扮する駒子の心の機微についていけなかった。駒子は繊細すぎて、いちいち何に傷つき怒っているのかさっぱりわからなかったのである。駒子の心情をもっと理解したいと思って本書を読んだが、実を言えば未だよくわかっていないままである。

普通なら、よくわからないコンテンツは「つまらない」と判断し、それ以上観る気が失せるものだが、たまにそうではないものがある。わからないけど解りたい、解ったらもっと違う世界がみえる予感がする…たまにそういうものに出会うことがある。少し逸れるが、初めてラーメンズの「不透明な会話」を観た時がそうだった。よくわからないけど、まだこの雰囲気に慣れていないだけで、慣れたら面白い気がする…その時はそのままうっちゃっておいたのだが、数年後にふと気が向いてもう一度観てみた結果、見事その虜になってしまったのだった。

ベクトルは違えど『雪国』もそうしたコンテンツだという予感がぼくの中にある。空想と現実の境界をさまようような幽玄で美しい表現、駒子の秘めた熱情、やるせない人生の陰翳。ベールの向こう側にその本質があって、でも今はそれを取っ払うことができないから、どうしようもなく惹かれるのにその輪郭だけがみえている。ぼくがもう少し成長したうえで読んだら、より深くこの作品を味わえるはずだという確信めいたものを感じている。

「なんとなく好きで、その時は好きだとも言わなかった人の方が、いつまでもなつかしいのね。忘れないのね。」

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