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『フェルマーの最終定理』を読んだ

8/6、読了。

7月は全然読了できなかった。昼休みに毎日読書してはいるのだが、元来遅読なのに加えて何冊かの本を読み散らすことに原因がある。まあ活字を取り込めればよいのであって、別に読了することが読書の目的ではないので、気張らずにやっていこうと思う。お付き合い頂けると幸いです。

『フェルマーの最終定理』!なんと格好良い響きなのだろう。数学はおろか算数もさっぱりな自分でも心惹かれるものがある。

3 以上の自然数 n について、xのn乗+yのn乗=zのn乗となる自然数の組 (x, y, z) は存在しない。

一見すると簡潔極まりない定理だが、証明しようとする数学者達を数百年もの間はねつけてきた。本書は、子供の頃からの夢を追い続けた天才数学者アンドリュー=ワイルズが当定理を解き明かした過程を軸に、数学の歴史を追っていく一大歴史スペクタクルである。

これだけたくさんの人物や難解な数学の定理を、重厚感たっぷりに、しかし分かりやすくまとめた筆者のサイモン=シンの筆力には驚かされる。丁寧な説明を要する証明等は、補遺として巻末に収録されている。残念ながら自分の貧弱な頭では、補遺6の点予想の証明がいまいち理解できなかったが、それはぼくが極端に幾何学を苦手としているからだというだけだと思う。他にも図が豊富に用いられ、全ての読者をできるだけ置いていくまいとする心遣いには、たいへん好感が持てた。

真である命題を積み上げていく学問である数学に、真ではあるが決して証明できない命題が存在することを知り衝撃を受けた。しかもこれは、フェルマーの最終定理が証明される前に、ゲーデルが発見した事実である。自分が生涯追い求めてきた命題が本質的に証明できないものであるかもしれない…そのような恐ろしい可能性にも怯まず、敢然と挑み続けたワイルズの静かな芯の強さには畏怖を覚える。

教科としての数学は嫌いだが(できないから)、学問としての数学には憧れがある。あらましだけを聞いてわかったような気になるのは無責任だと重々承知してはいるが、これまでは全く不可解だった数学という学問の輪郭を見せてもらったような気がする。数学者とは、思ったよりもずっとロマンチストな人々のようだ。

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