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『Portrait in Jazz』を読んだ
2022/2/20、友路有(トゥモロー)にて読了。すごい当て字だ。
ジャズに詳しくなりたいと思って何年も前に買ったはいいものの、本文で紹介されたアルバムをいちいち聞きながら読み進めていったので、読了までにえらく時間がかかった。それも常に読んでいたわけではなく、思い出すたびに引っ張り出して前回の続きから読むということをしていたので、余計に時間がかかる。ただ、結果的にはこれでよかったのだろう。最初の方はジャズメンのことを何も知らなかったので、未知の分野の図鑑を初めてみるような感覚だった。しかしぼくのApple Musicのライブラリに少しずつジャズが加わるにつれ、聞き覚えのある名前がちらほら出てきて、読む取っ掛りができてきた。詳しくなろうと思って詳しくなるのではつまらない。本当に自分がジャズというものに興味を持って、その世界に触れようとするには、これくらいの期間が必要だったのだ。
“Portrait in Jazz”は、言うまでもなくビル=エヴァンズの名盤からとったものであろう。これは今ではすっかりぼくの愛聴版で、卒論を書く時もひたすらこのアルバムを通しで聴いていた。
和田誠による55人のジャズメンの絵に、村上春樹がそれぞれエッセイを付すという形式で編まれた本書は、両者によるジャズへの愛に溢れている。そういえば先日和田誠展に赴いた時も、本書のイラストが展示されていて感慨深いものがあった。村上春樹の語り口は、ひとが好きなものを語る時には往々にしてそうであるように、至って親密である。これだけ多くのジャズメンを語れば、普通ならどこかで語彙が被りそうなものだが、よくもまあそれぞれのジャズメンに対し、完全にオリジナルな言葉で彼らの音楽を評することができるものだと敬服する。ジャズを聴く時の羅針盤として、事ある毎に読み返したい。今は「ふ〜ん、そんなものか」と感じる文も、将来もっとジャズに親しめば「そうそう、まさにそうなんだよ」と共感できるだろうという確信を持たせてくれる本だった。
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