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『クレーの贈りもの』を読んだ
2022/4/29、家にて読了。
クレーの《忘れっぽい天使》が好きだ。その割には、クレーのことを何も知らないなあ…と思い購入。別に好きだからといって詳しくなる必要はないのだが、好きだと知りたくなっちゃう。
本書は、クレーの絵と、彼の絵を愛する文筆家たちの断章によって構成される。ちなみに《忘れっぽい天使》に文章を寄せていたのは、阿川佐和子先生だった。父親の友人であった吉行淳之介先生との素敵な思い出が記されている。クレーの生い立ちに関するコラムや、クレー作品を所収する美術館リストも同録されており充実している。
個人的にモノクロのイラストレーションを描くイメージがあったので、こんなにも色彩豊かな画家であったことにまず驚いた。しかし、ひとたびそうだと知れば、例のモノクロの天使が持つやさしさと色彩のやわらかさには、どこか通底するものがあるように思える。
1914年のチュニジア旅行と、その14年後のエジプト旅行は、画家クレーを大いに刺激した。前者は色彩感覚、後者は描線と発想に影響を与えたようである。クレーの足取りをなぞる形で、実際に詩人がチュニジアを訪れる旅行記も収録されており、旅を追体験できる。アフリカの灼熱の太陽が紙面から差し込んできて、前髪を焦がすようだ。展覧会に行くと、現物と比べおみやげのポストカードの色彩がひどく色褪せて見えて、結局買うのをやめてしまうことがよくあるので、いつかこの目でチュニジアン・ブルーを見てみたい。きっとどんなに鮮やかなことだろう。
p.s. そういえば、エンドウシンゴ feat.さとうもかの『クレーの絵本』というアルバムがとても良かったことを思い出した。全11曲だが、通しで聴いても20分で終わるので気楽に聴ける。
本書にも寄稿している谷川俊太郎は『クレーの絵本』という混声合唱組曲の作詞を担当した。これは後に同名の絵本にもなっているが、前述のアルバムはこの組曲をアレンジしたものになっている。個人的には「死と炎」が特に好き。お手隙の際に聴いてみてください。
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