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『羊をめぐる冒険』(上)を読んだ

2022/7/4、読了。

上下巻をまとめて買うのが苦手だ。いったん下巻を読み始めれば楽しいことはわかっているのだが、上巻を読みながら意識のどこかで「下巻も読まなければならない」と思い続けるのに耐えられない。何冊かの本を同時並行で読み散らすタイプなので、同じ本に集中し続けることが難しい。上巻を読んだ以上、下巻も読まなくてはならないのは、下巻を買っても買っていなくても変わらないのだが、買ってしまうとより「下巻」という存在が頭の中のウェイトを占める。

それに、上下巻を読み終えるまで自分が生きているという保証がどこにあるのだろう?同じ理由で、パスモに3000円以上チャージすることが出来ない。1万円をチャージしているひとを見ると正気か?と思う。1万円を使い切るまで自分は生きているという盲目的な自信。ぼくも1万円をチャージして豪胆に生きたい。なんの話だっけ。

中1の時に『ノルウェイの森』の上巻を読み終えたが、購入済みの下巻を今も本棚に放置し続けている。『騎士団長殺し』の上下巻をまとめて買ったが、上巻を読みかけたまま同じく本棚の肥やしになっている。買った本がスタコラサッサと逃げていくことはない、そのことに甘えているのかもしれない。

本作は、村上春樹の「鼠三部作」といわれる作品群の最終作にあたる。2作目の『1973年のピンボール』は既に読み終え、いま3作目を読んでいることになる。1作目の『風の歌を聴け』はまだ未読だ。どうしてこんな順番で読むことになってしまったのだろう。『スターウォーズ』をめちゃくちゃな順番で観る狩野英孝みたいだ。

初期の村上春樹作品は、軽薄さと哲学が混在しているような感じが癖になる。なんというか、ふざけていることを真顔で話すひとのような作品なのだ。ユーモアと真剣さが同居していて、このひとは結局なにを思っているのだろうと知りたくなるような感覚。なにも思っていないのかもしれないけど、それでも滲み出てくるものがあるような気がする。あと、村上作品の主人公はこれでもかというほどモテる。モテ過ぎてもはや面白い。ただ、去る者は追わずなので、女たちはさみしさを抱えて去っていく。ドライブスルー的である。

面白いので結局下巻を買いに行く羽目になる。いつ読み終えられるのかはわからないけど、できるだけ頑張ってみたいと思う。

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