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『中国を考える』を読んだ

2022年4月11日、読了。

阪大外語で同窓だった司馬遼太郎・陳舜臣両名の作家による、滋味溢れる中国論。司馬先生はドナルド・キーン先生との対談も抜群に面白かった記憶がある。もっとも、あれは日本論だったけれども。歴史小説はかなり長いイメージがあってあまり手が伸びないのだが、対談がこれだけ面白いのなら、小説のほうも読んでみようかなという気にさせられる。

カバー袖の記載によれば、司馬先生はモンゴル語、陳先生はヒンディー語を学んでいたようだ。陳先生のことは恥ずかしながらよく存じ上げなかったのだが、同じ専攻言語とあって親しみが湧く。中国と歴史的に関わりの深い地域であるモンゴル・インドについて学んできた二人ならではの切り口もあって、たいへん興味深く読んだ。どちらもその豊富な知識と、西域の方に実際に足を運んだ体験とを絡めてお話されているので、耳慣れぬことであってもイメージし易かった。何より旅情が掻き立てられる。ビバ・シルクロード!

今から40年以上前の1978年に発行された書籍なので、現在と比較すると、中国に対する認識はかなり異なるように思える。改革開放が同年に始まったことを鑑みても、世界が新・中国に期待をかけていた頃だろう。もしも司馬先生と陳先生が生きておいでだったとしたら、現在の中国の状況をどう思われるかお訊きしてみたいところだ。

しかしそうはいっても、数々の異民族が織り成してきた豊かな文化的魅力が廃れることはない。中国が抱える悠久の時に思いを馳せた時、ぼくらは浪漫を感じずにはいられない。本書には、その浪漫のエッセンスが凝縮されている。

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