5/1-掌編小説 雨を待つ

 いやだから、つまりは、きっとね、ぼくは君の体だけじゃなくて、君の心を見ていて、君の頭の中も想像してしまうんだよな、そんなぼくを、気持ち悪い怖いやめてさよならって言うのかい、さみしいよ。
 ねぇ、さみしいよ、身体の悲鳴は無視しながら働き、心は殺して物事を見て、大事なことを考えることを放棄したまま生きながらえている君に、この体を捧げろって言うのかい、人生なんて所詮そんなもんだよって言うのかい、ねぇ、君ね、自分の娘にも同じことが言えるのかい、ぼくは言えないよ、ぼくは言えないから止めたよ、ひかりを止めたよ、ひかりはひかりだけのひかりじゃない、ひかりは体だけのひかりじゃない、心と頭を無限に持ってる一人の人なんだからね。
 娘がいたことなんてないからそんなことわからないよって言うのかい、それならずっとそのままでいろよ、それができるのかい、なってからでは遅いんだよ、なってからわかったってもう手遅れなんだよ、いつだってなんだって、なる前に考えておかないといけないんだよ、なってしまってからなんて、そこから何がわかったってもうそれは手遅れだろ、経験しないとわからないって人々は言うけどさ、いや、わかるでしょ、人のこと見てたらわかるでしょ、経験者の言葉なんてものは当てにならんが、考えればわかるでしょ、考えろよ、考えとけよ、考えてみてくれよ、馬鹿者、おれの叫びを聞けよ、馬鹿者。

行きたいところにふらっと行きたい、ひとりのひかり暮らし、明日を恐れずに今日を生きたい、戦争と虫歯と宝くじのない世界を夢想してみる。