掌編小説 絶望の光

 喜びは大袈裟に伝えるの、またお願いねって、こんなに嬉しいんだよって、これからもよろしくねってことを表現する。悲しみはスッとその事実だけをサッと、瞬時に伝えてまるでなかったかのように、だけどたしかにいまあったことをただ忘れ去ってしまうということはないように、確実に伝えるの。

 日本の大人たちは、喜びも悲しみも無言で受け取る。喜びを消費し悲しみを繰り返す。与えられる幸せを、ただ有難く、手放しで喜び享受し
与えられる苦しみを、ただ黙々と噛み締めていた。いつしか、幸せであること、幸せを与えられることに慣れ、気づかなくなり、与えられる苦しみにだけ文句を覚え始めたぼくらは、幸せだけを貪り、残る苦しみを放棄するようになって、すると苦しみばかりが溢れかえり、足りない幸せの奪い合いをすること、それが日本の日常となった。

 日本に魅力的になってほしい、それがおれの願い、おれの夢。そしておれは自分のことを日本だと思っている。おれは日本の一部で、日本はおれの一部だと思っていたけど、それはつまり、すべては繋がりのある大きなひとつだから、おれは日本で、日本はおれだ。日本が魅力的ってことは、おれが魅力的ってことだ。日本が最低ってことは、おれが最低ってことだ。おれが魅力的ってことは日本が魅力的ってことだ。おれが最低ってことは日本が最低ってことだ。

 日本の女性、クールな人、多くない?冷たいよね。だけど本当は燃えている、熱い、熱すぎる、全てを燃やし尽くしてしまうほどにメラメラしすぎていて何もできなくなっている、何もしてはいけないようになっている、弱すぎて、すぐに壊れてしまうものばかりで溢れた社会が弱すぎて、パワーを隠し密かに育てながら生き抜いてしまったつわものたちは、力を発揮させることなど到底できないでいた。小さな社会の中に収まらない、燃えたぎるパワーを解放しよう、社会の外には広がっている無限の空間へ。誰かからもらえる幸せは儚いから、ごめんなさい、いりません。すぐに消える偽りはいらないのです。

行きたいところにふらっと行きたい、ひとりのひかり暮らし、明日を恐れずに今日を生きたい、戦争と虫歯と宝くじのない世界を夢想してみる。