5/6-掌編小説 恋人がいて、愛人がいて、その人々によりあなたがつくられていくのでしょうか

 恋人より愛人タイプだよね、恋人よりもっと重い、もっと深い、もっと怖い、言い訳できない、逃れられない、そんな一人、しかし、ぼくは人。恐ろしい女、ではない。「女は非常に完成した悪魔である」かつて誰かが言ったそうな、よくわからないけど、ぼくもそう思う。そしてぼくは女ではない。
 恋人は他者に見せびらかしながら、ゆるく体を満たし合える他人同士の関係、だろうか、愛人は誰にも見せずに、心まで満たされたと錯覚してしまうような破滅へ向かうための相手、だろうか、ぼくはどっちもいらないし、どっちにもなる気はない、ただ君のことが好きだ。ありふれたどこにでもいるすぐに取り替えられる他の誰と見分けのつかないように揃えられた人々の中で、上手にその一員をいい子にやってる君を、見逃せない、あまりにも普通な取るに足らない男、本当の君はそんなんじゃないのに、恋人や愛人につくられてしまったのだろうか、君はそんなつまらない男じゃないのに、君は誰よりも輝いているのに。君の心は奪われている。ぼくが取り返す。

行きたいところにふらっと行きたい、ひとりのひかり暮らし、明日を恐れずに今日を生きたい、戦争と虫歯と宝くじのない世界を夢想してみる。