6/16-掌編 正義の味方
正義の味方だって
白馬の王子様だって
3分間の救世主だって
います
いますよ
ぼくです
いますぐいきます
いきますよ
しかし、しかしです、
どうやら
すみません、人手不足です
誰にでもできる簡単なお仕事ですよ
あなたも手を貸していただけませんか
はい、給料は出ません
そういう仕事じゃないので
日常の外にあるお仕事なので、
社会で使えるお金は発生しませんが
しませんが、しかし、
あらゆるところで悲しみが発生する前に救える機会が増えるので、つまり、それが仕事なので、
お金がさほどかからない生活を人々に提供することができるというとても魅力的なお仕事です
はい、人々は気づきません
讃えられることはありません
自分で自分の価値を知ることしかできません
たくさんのお金たくさんの無駄たくさんの犠牲を出すことが豊かさの指標だと思い込まさせている人々にはむしろ、その存在が気づかれてしまえば消されてしまうような待遇の悪さですゆえ、
志願者は現れません
現れても他人には見えません
自分で自分の価値を知ることしかできません
行きたいところにふらっと行きたい、ひとりのひかり暮らし、明日を恐れずに今日を生きたい、戦争と虫歯と宝くじのない世界を夢想してみる。