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むかしばなし

壊すほうがつくるより遥かに難しい時代になって、
ぼくらはうろたえた

むかしむかしは、つくれたらよかった、
つくるの大変だけど、つくれたらよかった、
壊れてもよかった、
壊れたら、自らわざわざ壊さなくても、壊れていくから、壊さなくてよかった
つくるだけでよかった、壊さなくてよかったし、壊すのは難しいことじゃなかった

壊すのは簡単だった、いらなくなったら、なかったことにできた


時代は進む
壊すのはつくるより難しい
つくったらいらなくなっても、そのままなかったことにはできない
なぜなら、自然に還らない、自然じゃない力をつかってつくったから


時間をかけなくても全てが手に入り
快適に過ごせた時代は終わり、

時間をかけても還れない世界をつくってしまっていたことに気づいた者たちは

つくること、いちばんになることよりさらに難しい、
これまでの栄光の壊し方、元あった世界への還し方について、
思案をめぐらせている

還す必要はあるのか、
溢れるごみをどうしたものかについて、
自分に頭があることに気づいた者たちから悩まされるようになった


ゼロから一をつくることの責任と、

一をゼロにすることを使命として誕生したものたちが一歩目を踏み出す勇気について

ぼくは考えあぐねていた


かつて人々は皆、
責任のあることをしたがった
しかし
責任を取れるものなどあるわけはなく、

ゼロから一をつくることの責任を、人々は軽視していた
浅はかな気持ちで責任を背負ってきた代償に、人々は言葉を失った

意思疎通に言葉を使うようになった人々は
言葉がなければ意思疎通できなくなってしまっていたのに、言葉を失った人々は意思疎通ができなくなってしまったんだ、
そんな時代があったんだよ

信じられるかい?

信じるまでもなく、

事実がそこにあるだろう?

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行きたいところにふらっと行きたい、ひとりのひかり暮らし、明日を恐れずに今日を生きたい、戦争と虫歯と宝くじのない世界を夢想してみる。