あの街、新宿歌舞伎町

ひとりぼっちのぼく。それを眺めて死にたいと呟いたきみ。ぼくは心底きみが羨ましかったよ。ぼくのまわりには誰もいなくて寂しくて、夏が近づく暖かさのなかで冷たく冷えた身体を縮こませながらぼくは涙を流した。いいよねきみは、死にたいと呟いたその言葉の行き場が決まっているから。私の大切な言葉は、行き場もなく宙に舞いどこかに散ってしまっているよ。ぼくは心底寂しくて悲しいんだ。歌舞伎町のさくら通りで、お姉さんかわいいねと声をかけられる度に。ホストクラブの初回を案内される度に。お金の関係の男性に優しくされる度に。嘘でもぼくが女の子として認められている事実に心を浮つかせてしまうのです。そのくらいぼくは寂しいのです。同級生の女の子たちのインスタを勝手に覗いて落ち込んで、ぼくはまた認められたくなって。普通と違ったメイクをして普通と違った服を着て、普通と違った街に繰り出して、今日もまた、あの人に会いに行くのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?