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The Code Breaker

Walter Isaacsonの新著「The Code Breaker」、ビル・ゲイツがお薦めしていて気になったので読んでみました。500ページを超える長編でしたが、とても面白く一気に最後まで読み切ることができました。

本書では、1950年代にDNA構造が解明されてから、遺伝子編集技術CRISPRが発見されるまでの研究開発の歴史が綴られています。また、CRISPR研究により2020年にノーベル賞を受賞したJennifer Doudnaの物語も重ね合わせて話が進んでいきます。

CRISPR研究には、同時期に多くの研究者が参入しており、論文公開のスピード勝負や特許バトルなど、まるでビジネスの世界のような激しい競争が繰り広げられていました。また、DoudnaのCRISPR研究はmRNAワクチンの技術と深く結びついており、mRNAの仕組みやなぜ効果が高いのかを理解することができました。

個人的には、遺伝子編集技術の倫理的な議論の部分が特に興味深かったです。遺伝子起因の病気を治療することができるようになる一方、身体的な能力向上などにも利用できます。遺伝子編集が規制なしに民主化されると、裕福な家庭は子どもの遺伝子を有利に編集するようになり、格差拡大や差別につながるのではないかと著者は警鐘を鳴らしています。また、遺伝子編集がさらに普及すると、同じような身体的特徴を持った人(身長が高い、目の色が青いなど)が多く生まれると想定され、人類の多様性が失われてしまうといったことも考えられます。

人類の未来を変えうる非常に強力な技術であるが故に、グローバルレベルで慎重にレギュレーションを作っていく必要性がありそうです。

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