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会えたら、という期待

この世には似た顔の人間が3人いるとよく聞くが、街を歩けば体型や雰囲気が知り合いに似ていることなんて山ほどある。

顔を鮮明に覚えられない私は、背丈や服装、雰囲気で知り合いかと思ってはドキドキする。
もし知り合いだったらそれはそれで気づかない方がいいのではと、ためらいながら振り向いて少しの安堵と残念な気持ちになる。


中でも「彼」かと思って振り返ることが多い。
私は引っ越したのにまだ彼に会いたいのか。


人間関係は期待するから悩むんだ、辛いんだ。
そんなことはわかっている。


別に悩んでもいないしもう辛くもないけど、私はもう会えなくなった彼にいつか会いたいと思っている。

いつかまた会えるんじゃないかと期待している。



だから、都内の駅であふれる人の中、私は振り返るのだ。

彼が東京にいるわけもないのに。


元気で生きていてくれたらいい、なんてキレイゴトだ。
元気で生きていてくれたらいいけど、あの時本当はどう思ったのかちゃんと聞きたいし、あの時私はどうしてああなったのか話したいのだ。



誰とでも繋がれる時代なのに
彼とは繋がれない。



それなのに私は

それでもいつか、数年後でも、数十年後でも、時が経ってもいつかまた彼に会えるんじゃないかと期待している。


バカみたい。

バカみたいだけど、きっとそう思う限り私はまた都内の駅で彼の影を見つけて、ひとりで笑うのだろう。

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