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ミシェル・フーコー

エピステーメー

人間社会は権力によって作られた『構造』
私たちはそれに支配されて生きている
それを解決するためには
過去に埋もれている『人間の考え方を形成したプロセス』を
歴史から掘り起こすことが必要

人間が支配されている構造を作った権力の集団が
その構造を作るに至ったプロセスは歴史に眠っており
それを解明することが構造打破の鍵になる
【知の考古学】

フーコーは歴史に埋もれた人間の思考形式を探っている際に
中世中国の百科事典の『動物の分類』を見て驚愕
現代の感覚では全く理解できない分類

人間の思考は古代より連続して進化したのではなく
各時代に特有な形で存在している
この特有な思考形式【エピステーメー】

中世:物事を認識する際に【類似】が重要視
世界の物事は類似関係によってお互いにつながっている
そのため、自然を中心にした占いなどが盛んに行われた

17世紀:【表象の分析】が重要視
ベーコンデカルトの影響
デカルトの演繹法的な思考が浸透
物事を比較や分類を通して表面的に理解する

19世紀初頭:【生命や人間】が重要視
科学の発展→生物の内部まで理解できることができるように
『生物』として見做してきたものを『生命』と認識するように
今まで『自分』『他者』と分類してきたものに
『人間』という新しい概念が誕生

フーコーによれば、人間という概念が発明されたのは
ここ200年ぐらいの話
→人は人間自体のことを深く考えるように
実存主義の台頭なども、この影響を色濃く受けている

各時代や社会において、エピステーメーは移り変わる
エピステーメーこそが構造の一部

我々は生きている時代のエピステーメーを利用して物事を認識する
その認識方法は、誰に教わったのでもなく、生きていく中で
自然に身につけたもの

無意識のうちに構造に縛られ
我々の思考や感情はこの時代のエピステーメーに支配されている

人間の終焉

19世紀初頭に生まれた新しいエピステーメーも
そのうち終わりがやってくる

近代の認識においては『人間』という概念が重要視される
昨今では、人間は社会の構造に縛りつけられ
没個性化、平均化することで、社会の一部として存在

そこに『人間』という近代的な存在はなく、
『人間ではない何か』が存在している
…【人間の終焉】

「狂気」の認識・生権力

【狂気】の認識も時代特有の形式に縛られている

中世までの世の中:狂気はある意味真理と近い存在として認識される
『今の社会は間違っている!』
『みんなの考え方は間違っている!』
『もっと違うやり方がある!』
当時の社会から逸脱した思考に対しある意味寛容だった

近代に入り工業化が進むと、狂気は無用の長物に
労働力にならない戯言として認識

社会に適した生き方をする人間を理性的、
そうではない人間を非理性的とみなし、積極的に排除するように

何かの判断をする際に「これは合っている」「これは間違っている」と
分けるためにはその基準が必要
しかし【狂気】と判断される基準を我々は明瞭には学んでいない
→無意識下において、我々は何かしらの枠組みに組み込まれていて
その枠組みからはみ出すものを【狂気】と捉えている

この枠組みが権力者によって作られた【構造】
【生権力】…近代的な権力構造

近代以前は、多くの場合【殺す権力】が利用
恐怖によって、民衆を縛っていた

民主主義の台頭により殺す権力で民衆を縛れなくなった
そこで作られたのが【生権力】
より良い構成員を生かすことで、権力を維持する方法

近代に入ってからは、民主主義が作り出した生権力によって
我々は支配しやすい構成員として教育されている
その権力が作り出した構造の中で縛られて生きている

フーコーは構成員を支配しやすい存在に教育する方法を
【身体的】【精神的】観点から提示

身体的に教育を施すテクニックは大きく3つ
『閉鎖的な空間を設定し、その空間をそれぞれの集団に分ける』
『起床から就寝まで、時間を細かく管理する』
『道具や機械と一体化した体を作る』

【精神面】の教育…【パノプティコン】

パノプティコンは日本語で全展望監視システムと訳される
功利主義者のベンサムによって提案された監獄のシステム

囚人は円形の監獄にそれぞれ収容される
真ん中には全ての部屋を見渡せる監視塔がある
囚人からは監視者が見えないが、監視者からは囚人が見える

囚人の視点からは、監視者が不可視であり抽象化されている
仮に監視塔の中に監視者が存在しなくても
囚人は規範を守って行動することに期待ができる

【パノプティコン効果】
誰に強制されることもなく、抽象的な監視によって
自発的に規律を守るようになること

見えない監視者を意識的か無意識的かで感じ取り
自らその『何かが決めた規律』を守って生きている
規律を守るうちに
規律自体が監視者となり、抽象化された規律である【構造】の存在すら
認識できなくなる

無意識に刷り込まれた構造からはみ出すものを
【狂気】と断定、多人数で排除
それにより、さらに管理の力は強まる

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