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【趣味・映画の話】ドント・ブリーズ

みなさん映画好きですか。僕はわりと好きです。

『わりと』って書いたのは、ダッセー予防線です。
今の大インターネット時代、僕なんかより映画に『詳しい』ひとなんかいくらでもいるわけですよ。
ゲーセンでひとりモードでスト2遊んでたらHere Comes A New Challenger!してきたみたいな話もあるわけです。
でもまぁ、映画みた僕の『感想』だけは僕だけのもんやろ。


・あれから思うように息ができない
ネットフリックスで【ドント・ブリーズ】を観ました。
いや、やっとですよ。
観に行くぞーと思ってるうちに気がついたら機会を逃してたやつ。あるあるですね。

『盲目のおじいちゃんが侵入者を全力で殺そうとする話』
一言でいうとそういう映画です。

「自分と妹でバカ親から逃げるための資金を工面するために空き巣をする女」に、
「そんな女とイケイケドンドンで空き巣しまくる頭パーなカレシ」
「そしてそんな女に横恋慕してて、空き巣の手伝いをしちゃう童貞っぽい兄ちゃん」
こんないかにも死んでもあと腐れなさそうなパーティが、退役軍人のおうちにお邪魔しちゃおうというのだから、
観客はおじいちゃんがどうやってこのスッパラパーなヤングたちをブッ殺すんだろうとワクワクするわけです。
『ざまぁ系』とか『スッキリJAPAN』みたいなのが好きな人も大満足ですね。知らんけど。


・音の映画
この映画を観ていて、一番グッと来たのは『音』の演出効果でした。
最序盤の侵入時に老人を起こさないように静かに、静かに侵入するシーンから、
老人をガスで寝かしつけたと安心してから急に大きな音がガタガタッと鳴り始めるこの緩急。
この時点でこの映像空間は『音』が支配していると思いました。

そして老人が侵入者に対する殺戮を始めてからは、沈黙が映画を支配し始めます。
音を立てれば死ぬ。ケータイを鳴らせばそこに弾丸をぶち込んでくる。
物語の進行とともに老人の知覚も鋭敏になってゆきます。
青年の「スゥ」という一息を聞きつけて殺しにゆきます。

しかし生きるためには音を鳴らさなければならない。
若者たちが生きるためのアクションを起こすときは必ず『音』が生まれます。
鍵をかけられた扉を開けるにはジャラジャラと鍵束から正解の鍵を探す『音』が出てしまう。
鉄格子を嵌められた窓を蹴破るにはガンガンと『音』がなってしまう。

音を立てれば死ぬ、しかし音を立てなければ死ぬまでそこから出られない。
つまり『音』が生のメタファーとなっており、それと同時に死の予兆にもなっている。
人は常に死と隣合わせに生きている……。
いや、流石に僕の考えすぎだと思う。

・ミルナの禁
しかしこのおじいちゃんが侵入者を撃退するのは、ただの自己防衛ではない。
このおじいちゃんが明確におかしくなるのは、オラオラしてるカレシくんが『ある扉』を開けようとしていたことを察した瞬間からです。
「ちょっwwwめっちゃ鍵かけてあるじゃんwww絶対ここに金隠してるぜwww」
と拳銃で鍵をボカーンと破壊したところで、おじいちゃんの殺戮タイムが始まるわけです。

『ミルナの禁』という概念があるそうです。
「立入禁止」「開けてはならない」そういった、見ることを禁じられているものを見てしまうことによって、そこに封じられていた怪異が解き放たれる。
イザナミが黄泉の国でイザナギに姿を見られてしまったことで一日に1000の死を喚ぶようになったような、
おじいさんが機織りをする娘の正体を覗き見てしまったことで幸せな生活が終わってしまったような、
そういう教訓めいた物語が色んな所で見られます。

【ドント・ブリーズ】もまた『ミルナの禁』の映画なのです。
怪異に足を踏み入れてしまった軽率な若者たちが呪いによって破滅する。
そういう見方ではある種古典的なホラー映画でもあります。

おじいちゃんの家の扉は一体何を『禁』じていたのでしょうか?
みんなも観よう。
オチなんてここには書かないよ。ファスト映画じゃねんだから。

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