親の離婚を経験した子どもに聞く「単独/共同親権?」

2021年に入り、法制審議会家族法制部会で「離婚後の親権のあり方」などをめぐる検討が続いている。

現在の日本では、離婚後は片方の親のみが子の親権を持つ「単独親権制度」だが、離婚後も双方の親が親権を持ち、子の養育に関わり続ける「共同親権制度」を導入(選択的/原則的など)するかどうかが審議会での大きな焦点の一つとなっている。

国内では共同親権推進派と慎重派の間で対立が続いているが、親の離婚を経験した子どもたちは親権のあり方についてどう見ているのか。

ひとり親環境で問題を抱える子への取材が多いこともあり、「共同親権になってほしい」とはっきり言う子もいる反面、多かったのは明答がないことだった。「子どもにとって、普段の生活で親権を意識することってほとんどないから」と。「争いの種になるくらいなら、親権なんてなくなればいいとさえ思う」という子もいた。社会的な対立を父母間の対立と重ねてみる子も少なくなく、距離を置いておきたいとの思いも感じられた。

「どちらでもいい」「あまり考えたことないんです」という子でも、「ただ」とあとに続く。

「『離婚しても子どもにとって親はふたり』と、親、社会の認識が変わってほしい。共同親権が導入されることでみなの意識が変わっていってくれるなら、そのほうがいい」との期待を寄せる声も少なくなかった。共同親権導入の是非というよりも、そのことによる社会認識の変化や支援制度の整備などを願う声が強かった。

一方で、現在のような単独親権のみの制度に関しては「『離婚したらひとり親』との意識を助長している」「DVや虐待の懸念があるにしても、なぜ共同親権が選択さえもできないのか分からない」との声が相次ぎ、私が取材した範囲では、現行制度を支持する意見を聞くことはなかった。

離婚後も元配偶者との関係が続くことでDVや虐待が継続する懸念があるとの慎重派の意見も理解できる。日本の保護制度が不十分であることがその大きな一因になっていることも。一方で、取材では、離れて暮らす親に会いたいのに一緒に暮らす親に気兼ねして言えなかった子、虐待が疑われる親に引き取られて苦しむ子、会おうとしない親の姿に「見捨てられたのでは」と悩む子、離婚した後も諍い続ける親の間に挟まれ、疲弊する子たちに何人も出会った。母親が家を追い出され、何も分からない幼い妹弟に「母は交通事故で死んだ」と言わされている女の子もいた。約20年間、離れて暮らす親に会えなかった男性は「もうこれ以上子どもから親を奪わないでください」と訴えていた。

話を聞いた子どもたちの間でほぼ共通していたのは、繰り返しになるが、
「もう争わないでほしい」
「子どもにとってはお父さん、お母さん両方が大切」
との思い。

審議会の中でも、「親権」との用語を「(親の)責務」や「責任」に置き換える提案も一部委員から出されている。そもそも「親権」あるいは「親責任」は誰のためのものなのか。「子どものため」が第一義であるならば、「別れても親はふたり」との子どもたちの願いを基礎に、共同親権の導入も踏まえて議論を進めていくことができないのだろうかと思う。


*【養育費】厚生労働省の2016年度調査によると、現在も養育費を受け取っている母子世帯は24.3%、父子世帯は3.2%。


*【面会交流】同調査によると、離婚時に面会交流の取り決めをしている母子世帯は 24.1 %、父子世帯は 27.3 %。取り決めをしない最も大きな理由として「相手とかかわりたくない」をあげたのは母子世帯で25.0%、父子世帯で18.4%にのぼり、「相手から身体的・精神的暴力や児童虐待があった」は母子世帯で3.1%、父子世帯で1.5%。一方、「相手が面会交流を希望しない」も母子世帯で13.6%、父子世帯で7.3%ある。

離婚後、離れて暮らす親と定期的に面会しているのは母子世帯で29.8%、父子世帯で45.5%。実施頻度は母子世帯では「月1回以上2回未満」、父子世帯では「月2回以上」が最も多い。

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