創作ホラー②『警告⚠️』

某S県、山手にあるとある観光地に部活動の合宿で来ていたYさん。
休憩時間に仲間とともに昼食を取ることにした。
夏場で喉が渇いて仕方がない。定食屋か喫茶店を探して歩いているとYさんの中にとある記憶が蘇る。
ここ、以前夢で来たことがあるかもしれないー
夢で見た架空の地に再び夢で訪れた経験はないだろうか。
既視感がもたらす、何か手掛かりを掴めそうな気になるもどかしさと、記憶違いかもしれないという気持ち悪さが交わったこの現象に「@@@」と名づける。

@@@の余韻を噛みしめながら仲間を先導するYさん。Yさんのあとにつづくのは職場の上司U課長。高校時代同じグループでつるんでいたが少し苦手意識のあったD一。どこにでもいそうな愛嬌のある美人のR子だ。Yさんの脳が記憶を元につくりだした今回の夢で共に行動するパーティである。

休息できる場所を探すYさんの後ろには同級生だか同僚だかわからない所詮”モブキャラ”たちが続く。
朧げながら浮かんでいる目的地に向けて歩くと、まるでRPGのエリア切り替え地点のように1歩先から大雪が降っている地帯に遭遇する。
仲間たちの文句を言う声が聞こえるが振り切りずんずんと歩んでいく。
1軒の喫茶店の前に立ち、扉を開けるとパーティの4人で店内に入る。
「4名様ですね。コーヒーか紅茶、どちらになさいますか。」2人の女性店員が出迎えた。
それぞれが返答したが、U課長が途中で紅茶をキャンセルしコーヒーを頼み直した。

“バシャッ”
女性店員は入れかけた紅茶を叩きつけるように別のグラスに移し替えたのである。そして驚くことに無言でそのグラスを私の前に差し出したのだ。

“普通じゃない”
目の前の人物の異常な行動に対して何も指摘することができなかった。Yさんは心なしか薄く濁って見える紅茶を当然飲むことはせず、ただ次の行動を待っていた。

店頭入り口では”モブ”たちが待たされている。いつまで経っても店内に案内されないモブがしびれを切らして一歩踏み出したところで、

「940名様ですね。ご案内いたします。」
そう告げて勢いよく立ち上がったのは、初めてこの店を訪れたはずのR子であった。R子の表情はどんなお店にでもいる学生アルバイト店員そのものである。ただし直前までのいきさつを見ていたYさんからすると脈略もなく唐突に役割を与えられた異様な傀儡のようにしか見えなかった。

さっきの女性店員の頬を涙がつたう。彼女もまた、これまでの人生の記憶が全て抜け落ちており、いつからかここで支離滅裂な行動を繰り返すだけの機械人形と化していたのである。

子供の頃に見て忘れられない不気味な光景、
ネット上に残る都市伝説、
どうしても理解が追いつかず脳が考えることを放棄してしまったあの日のあの出来事。

全ての人間が理にかなった行動を取るということは絶対にない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?