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「別れ」で近づく距離

イタリア人の同僚が「今の仕事を辞めることにした」と。

彼女とは数年仕事でやりとりして、前にも説明したことを再び聞いてくるもんだから、仕方ないなぁーと思いながら時々電話しては、彼女の悪気の無さに「まぁいっか」とおわっていた。

その日は仕事の話は早々に、お互いのプライベートの今後の話になった。私自身のことも聞かれ、気がついたら結構本音で話していた。

最後にお互いのメールアドレスを交換して、ミラノに来ることがあったら会おうよって言ってくれた。

別れって、ある意味。人と人が急速に近づく起爆剤みたい。
数年経っても縮まらなかっただろう距離が、別れをきっかけにぎゅっと近くなる。
時々そんなことがある。

別れてからの方が、相手のことを考える時間が増えることもあったり。
思い出がそこから上書きされないから。何度も同じシーンを頭の中でリプレイしたり。
一緒にいた時にはわからなかった気持ちに溢れたり。
別れという言葉の意味するところとは違う方向に作用することがある。

そのイタリア人の彼女とは、ミラノで待ち合わせしようものなら、「あれ、今日だっけ?」ってすっぽかされそうな気も少しするけど、そしたらミラノの美味しいものでも探しに行くかってプランBもわるくない。
この別れはワクワクに変わるかもしれない、そんな期待を持った午後の時間。