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短文| ろぼこは今日も走る

ろぼこの脚が折れた
入院するほどではない、といえば、誤解をまねくだろう

にんげん?
いや、違う
かぞく?
どうきょにん?
それもまた違う

そもそもヒトではない

厳密にいえば、愛用している自動お掃除ロボットだ

その『ろぼこ』の履き掃除をする部分の脚が折れた、が正しいかもしれない
いや、正しいのだろう、他人にとってみれば。

所詮は掃除機だ
でも、僕にとって、『ろぼこ』は『ろぼこ』だ

大阪に住んでいた時からさんざんお世話になっている
大阪の友達も『ろぼこ』と呼んでくれていたお掃除ロボット

外出時もせっせと我が家を掃除してくれる『ろぼこ』
時には拭き掃除もしてくれる『ろぼこ』

もう捨てないといけないわけでもないのに
履き掃除の一か所が折れただけだというのに
悲しくなってしまった

愛用のスーパーX(接着剤)と固定用のテープを留めて
一晩待てば、おそらく治る話なのだけど。
悲しくなってしまった

物は劣化する
それは人間も同じ
時をかさねてしまえば
形あるものは壊れていく

それをまざまざと見せつけられたようで
途端に悲しくなってしまった


ろぼこは今日も走る

折れた脚など気にもせず
センサーという名の触手を使って
壁に当たることもなく
段差もさっと避けつつ
僕がいると
「邪魔でーす、退いてくださーいっ」
って感じで
僕の周りを少しうろうろした後に
また別の場所へ走って行ってしまう

ろぼこは今日も走る

「終わったよー」と言わんばかりにどや顔しつつ
自分の場所(充電ステーション)へと帰っていく

ろぼこは今日も走る

ピピッと声を出しながら
大きい足音を立てつつ
僕はその姿に愛着を持ちつつ
今日もろぼこが掃除してくれた部屋の中で
快適に過ごすのだ



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