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大学生散文|感情紀行記

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感情の動いた時を書き記す【感情紀行記】をまとめています。
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2023年9月の記事一覧

【感情紀行記】知足

 なんとなく足らない。日々を満たす何気ない日常のモノクロの主人公として映し出される自分には何か足らないように感じる。足るを知る。満足。そういう言葉の重要性とか、尊さというのはかなり理解してきたつもりだし、説いてきたつもりであった。しかし、やはり人間である以上、ないものを欲しがってしまう。  人間は社会というものを作り上げて以後、無限の相対性の渦に巻き込まれてしまったように感じる。上か下に人がいるからその中間に自分がいることを確認するのだ。労働者がいるからこそ、非労働者たる貴

【感情紀行記】悠久の変遷

 どの街にもお祭りや神事など、伝統と歴史の積み重ねの様な行事があるのではないかと思う。日本という長く歴史が続く中で培われた伝統行事というものの重みは計り知れないものがある。  そんな街の伝統を感じさせる街のお祭りがコロナ禍から復活した。街の人々と再会をするとともに、この地区のお祭りに参加できるのは今年で最後という人や、再会を果たせなかった人達がいる。首都圏では空前の再会開発ブームが到来しており、土地の統廃合が進んでいる。暮らしやすい街づくりの裏で、消えていくコミュニティがあ

【感情紀行記】タスク

 大学生という身分はとても良いものだと感じている。北欧旅行では、幾度となく学割を使わせていただいた。昔のことであるが、東京駅のディズニーへと向かう際、京王線ホームへの長い動く歩道の横に「大学は、人生の夏休みじゃない」という広告があったのを思い出す。長いようで短い四年間だが、人生の貴重な時間であり、余暇が長いのは事実である。何もしなくても、何をしていても「職業:学生」でいることができる最後の期間である。  さて、前述した通り、大学生は何をしても何をしなくても大学生なのである。

【北欧紀行記】地図の真ん中

 コロナ禍も落ち着き、大学生ならば海外へ行くべし、そういう意見が周囲からちらほらと聞こえてきた。初めは重かった腰も、後押しが加速度的に増えていく中、軽いノリで海外への渡航を決めた。発展途上国、先進国、大国、アジア圏、ヨーロッパ、アフリカ、様々な声が聞かれたが、安全が確保されていなかったり、整備が行き届いていない場所に行く勇気のない自分は今回、北欧3カ国を選んだ。  パッケージングされていない1人での海外渡航は初めてであったし、何から手をつけていいか分からず、全てを適当に決め

【感情紀行記】風向き

 時差ボケがひどい。日本時間夜、一睡もできずに朝を迎えた。朝7時、朝食を食べ終えたところで、うとうとと眠くなり、そのまま部屋で寝てしまった。食べた朝ご飯は夜ご飯だったのだろうか。そのまま起きると夕方の17時であった。流石に自分でも驚いた。ぐっすりとその時間まで寝てしまったのだ。スマホの世界時計を見れば理由は明らかで、北欧はいつも起きていた朝10時を指していた。これが時差ボケというものなのかとはじめて体感した。調べてみると、ヨーロッパから日本などの東回りで、5時間を超える時差は

【感情紀行記】受動態

 夏になるとアイスを食べる人が増える。一つだけ違和感を拭えないのがチョコモナカジャンボだ。森永製菓の大ベストセラーであるチョコモナカジャンボだが、私の目線からはどうも食べ方を誤っている人が多い。チョコモナカジャンボは、3行が6列に連なる構成である。あれをそのままガブリと噛み付く人がいるのだ。胸がゾワゾワする。バナナを横からかぶりつくような、キットカットを割らずに食べるような、袋菓子を下から開けるようなそういう気持ち悪さを感じるのである。折り線がある以上折って食べるのが流儀なの

【感情紀行記】心機一転

 日本に生まれたなら一度は行きたい、そう思っていた場所に遂に行くことができた。自然と歴史の融合とも言えるそんな場所であった。車の運転の練習も兼ねて、運転したものの、予想以上の距離であって、疲労困憊した。  一度は行きたかった場所。それは、伊勢神宮である。特別な宗教観や思想を持ち合わせているわけではないものの、歴史などを学んでいくうちに一度は行きたいと思う、そういう場所であった。初めは怖かった運転も、数日間かけて慣れていき、集大成として伊勢神宮への往復を決行した。  穏やか

【感情紀行記】パッチ

 書き出しが思いつかない。数日間。いや、数週間、気を病みに病ませていた。浮世離れしたような感覚であって、何も手付かずであった。様々なことを自らの身に仕掛けてみたが、効果はほどほど。日常のとっかかりにも引っかからずにいた。  社会との交信を徐々に狭め、隔絶しかけていたものの、社会性を保つために事前に組み立ていた予定は淡々とこなして行った。この夏の大型行事の一つであった西方遠征は、小慣れたものの、様々な問題を孕んでいた。問題を詳らかにして何か語るつもりはないが、問題の根幹たるも